研究課題/領域番号 |
18K13213
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
加藤 浩平 東京学芸大学, 教育学研究科, 研究員 (20812481)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症(ASD) / Quality of Life(QOL) / 余暇活動支援 / 会話型ロールプレイングゲーム(TRPG) / コミュニケーション支援 |
研究実績の概要 |
今年度は、昨年度に続き、教育・療育の現場でも使用可能な会話型RPG(TRPG)プログラムのプロトタイプ着手と、そのプログラム作成のベースのための自閉スペクトラム症(ASD)児を対象にした会話型RPG(TRPG)活動における進行役のゲームマスター(GM)の役割に関する研究、そして、それらについて国内での研究発表をおこなった。研究では、「TRPG活動におけるASD児の会話の変容とGMの発話の関係」という演題で、TRPG活動にプレイヤーとして参加したASD児2名および、TRPGのファシリテーター(進行・審判役)であるGMの発言のそれぞれに焦点を当て、GMの発話が参加児の発話の変容にどう影響したかを検討した。TRPG活動(全5回)の内容を記録して作成した逐語録を分析の対象とし、Adams & Bishop(1989)の会話分析の項目を用いて発話の種類の分類を行った。分析の結果、参加児が活動を重ねてTRPG活動に慣れていく中で、GMの質問形式が選択肢の限られた質問から自由度の高い質問に変化し、参加児が自由度の高い活動ができるようなっていくという変化が見られた。いっぽうで、GMの発話の内容(分類)自体については、全5回にわたり大きな変化は見られなかった。この結果から、GMが意識的にコミュニケーション支援的な関わりを行っていなくてもTRPGのルールや設定が参加児の発話に影響を与えていること、GMの役割とは、参加児の会話支援ではなく、ルールや物語に沿った質問や陳述、コミュニケーションの調整役などのTRPGの環境調整にあることが示唆された。国内での研究発表については、2020年9月に開催されたTRPGフェスティバル・オンライン、および日本発達心理学会(放送大学・オンライン)などでおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
3年目の今年度は、教育・療育の現場でも使用可能なTRPGプログラムのプロトタイプ着手のベースとなるASD児を対象にしたTRPG活動における進行役のゲームマスター(GM)の役割に関する研究を行った。しかしながら、昨年度に続き新型コロナウイルスの感染拡大による三密に関わる活動の自粛が政府より要請されており、本研究計画のメインであるTRPGを用いたASD児への介入研究やTRPGに参加したASD児への面接調査の延期を余儀なくされている。またTRPGプログラムのテストプレイも実施を延期せざるを得なくなっている。それらの影響により、本研究は予定より遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
4年目は、2年目の途中で新型コロナウイルスの影響で延期していた知的障害のない10代のASD児を対象にしたTRPGを通じた介入研究を出来る限り可能な範囲で再開する。必要に応じて、これまでの研究協力団体を通じて、参加児の再募集もおこなう。また同時に、TRPG活動に参加したASD児のうち、面接調査の協力を得られた児を対象に「活動への満足度」および「活動を通して感じた自分の変化」についての面接調査についても再開する。面接については、当初対面形式を予定していたが、オンラインのビデオ会議システムを使用することとし、内容は協力者の許可を得た上で録音・録画し、その後、逐語録を作成し、質的な分析・検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大による三密に関わる活動の自粛が政府より要請されており、本研究計画のメインであるTRPGを用いたASD児への介入研究やTRPGに参加したASD児への面接調査の延期を余儀なくされている。またTRPGプログラムのテストプレイも実施を延期せざるを得なくなっている。 さらに予定をしていた国内外での研究発表・学会参加のほとんどが実施・参加できず、実施参加できたとしてもオンラインによるものとなった、それらの影響により、次年度使用額が生じることとなった。 次年度はオンラインでの実施を踏まえた研究計画とそれに必要な備品購入を予定している。また新型コロナウイルスの感染拡大が収まり次第、当初の研究計画を進めたいと考えている。
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