本研究は聴覚障害児を対象とした文法学習教材の開発及び指導法の検討を行うものであり、具体的には格助詞の学習教材の開発及び指導法の検討を目的としている。 これまでの研究実績からは、聴覚障害児の格助詞選択の際に音声が同時に流されるような教材が正しい格助詞選択に繋がること(音声情報が格助詞選択に影響を与えていること)が示唆された。しかし、この結果については個人の聴力や語音聴取の状態等をふまえて検討することが必要であり、今後の課題となっている。また、動作の方向が分からない構文(受動文や授受表現、使役文、自動詞他動詞等)における格助詞学習においては、アニメーションを用いた解説が効果的であった。 最終年度には、オンラインで格助詞について学べるデジタルコンテンツについて検証するため、聞こえに課題のある児童生徒を対象にデジタルコンテンツを提供し、児童生徒の指導を行っている通級指導教室の担当者及び聾学校の教諭計36名を対象としてアンケート調査を行った。その結果、格助詞の学習において音声情報よりもアニメーションによる解説の評価点の方が有意に高く、また、反復して学ぶ機能に対する評価点が最も高いことが分かった。児童の学習状況について追跡ができた1例については、アニメーションによる解説を活用する時間が最も長く、自動詞・他動詞の違いによる助詞の選択の課題で誤答が減少した。学習を長期にわたって継続できた例であり、その理由として学習への取り掛かりやすさ、正誤のフィードバックの速さがあげられた。
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