研究課題/領域番号 |
18K13223
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研究機関 | 聖学院大学 |
研究代表者 |
井上 知洋 聖学院大学, 人文学部, 助教 (30635016)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 読み能力 / 認知能力 / 文章読解 / 相互作用 / 縦断研究 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,基礎的な読み能力と認知能力,文章読解力との間に相互的な関連が見られるか,またその関連の様相が発達に伴いどのように変化するかについて,小学2年生から5年生までの4年間にわたる縦断的検討を通して明らかにすることである。 平成30年度は,一連の読み能力ならびに認知能力を評価するための尺度群を作成し,それらを用いて縦断的検討の1回目の本調査を2019年1月から3月の期間に実施した。調査参加者は,小学2年生の児童189名(女児97名,男児92名,平均月齢100.2ヶ月)であった。現在までに得られたデータの分析結果から,主に以下の3点が明らかとなった。(1)基礎的な読みの速さはかな・漢字ともに一貫して呼称速度(rapid automatized naming)との相関が最も高い(r = .53-56),(2)漢字の読みの正確さは語彙力との相関が最も高く(r = .59),次いで形態素意識(r = .54),視空間知覚(r = .40)との相関が高い,(3)文章読解力は漢字の読みの正確さとの相関が最も高く(r = .72),次いで語彙力(r = .59),かな読みの速さ(r = .57),形態素意識(r = .56)との相関が高い。 以上より本研究のこれまでの結果は,漢字の読み,語彙力,形態素意識,文章読解力の間の関連の強さを示しており,これらの能力の発達傾向を高学年に至るまで追跡して評価し続けることで,子どもの読みの発達における4者の相互関係を明らかにできることが期待される。またそのような情報から,子どもの読みの発達を支える指導方法を考案する上での重要な示唆を得ることも期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
縦断的検討の初年度となる平成30年度は,当初の予定どおり初回の本調査を年度下旬に実施することができた。また,国内の複数の地域における調査実施協力者との間において,次年度以降継続して実施する予定の調査に向けて協力体制が整っている。
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今後の研究の推進方策 |
国内の複数の地域における調査実施協力者との間において,次年度以降継続して実施する予定の調査に向けて協力体制が整っている。なお本研究の調査参加者数に関して,本研究では追跡調査期間中の参加者の転居等による参加者数の減少を見越し,平成30年度の初回調査時点において200名の参加者を募集することを予定していたが,研究参加申し込み後の辞退等が重なり,やや目標を下回る参加者数となった。このことから,今後の各調査時点においては可能な限り参加者数を維持するための対策が必要と考えられる。現時点での具体的方策として,調査実施協力者との間で緊密な連携をとること,参加者や保護者ならびに調査実施協力校に対して調査経過に関するフィードバックを行うことなどを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
特に本研究課題の申請時に計上していた人件費に関して,調査用具(記録用紙等の印刷物)の作成やデータ入力等の作業を,補助業務担当者を雇用せず研究代表者が自ら担当することとしたため,予定していた人件費が発生せず,結果として次年度使用額が生じることとなった。次年度はさらに多くのデータを収集予定であり,データの入力ならびに整理等の一連の作業に掛かる負担が増すことが予想されることから,当該助成金は主にこれに掛かる人件費に充てることを予定している。
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