研究課題/領域番号 |
18K13224
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研究機関 | 目白大学 |
研究代表者 |
岡野 由実 目白大学, 保健医療学部, 客員研究員 (60785393)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 一側性難聴 / 発達支援 / 保護者支援 |
研究実績の概要 |
本研究は、一側性難聴当事者の障害実態に基づき一側性難聴児者とその家族に対する支援・助言の指針を得ることを目的とする。 【実態調査1】先天性一側性難聴成人(20歳以上)12名を対象に、個別に半構造化面接を実施し、難聴の発見経緯から診断、幼少期から現在に至るまで、一側性難聴により経験したエピソード、その時の心理や認識などについて自由に叙述を求めた。発達的変容について、成長に伴い情報の高次化と社会参加の拡大により聞こえの障害場面は複雑化し、聴取困難状況が顕在化する傾向が示された。障害認識について、学童期には自覚に乏しく、その後、成長とともに難聴に対する認識が深まり、友人関係や母親との関係形成の影響を受けながら、一側性難聴である自分を受け止めていく変容過程が示された。 【評価尺度開発】当事者の叙述から一側性難聴者の障害実態と心理状況に関する主要概念を抽出し、暫定版評価尺度を作成した。聴覚障害者支援の専門家10名にて内容妥当性を検討し、「一側性難聴者の聞こえの障害実態尺度」(3領域30項目)を開発した。 【実態調査2】上記尺度を用いて、一側性難聴者のソーシャルネットワークサービス(SNS)に登録者を対象にWeb調査を実施した。135名より回答を得て、一側性難聴による聞こえの障害について、各種の共通した聴取困難場面があり、相手に不快感情を持たせないかという危惧や、会話時の阻害感や不全感、不安が示された。 以上の研究に基づき、一側性難聴による障害実態や心理的負担感の発生機序、当事者の障害認識と対応行動の発達的変容について、各発達段階における課題を整理し、支援・助言内容を考察する。 2019年度は、実態調査1の被験者を12名に増やし、個々多様な障害状況の把握に努めた。さらに、一側性難聴者とその家族への支援として適切な情報提供の必要性について示され、その一環としてホームページの公開を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究代表者の出産・育児のため、研究活動が出来ない期間があり、当初の予定よりも遅れている。 2019年度で終了予定であったところを、2020年度終了と1年間の期間延長手続きを行った。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度については、 評価尺度を用いた実態調査結果について、さらに統計的検討を行い、一側性難聴者の心理的な負担感を発生させる機序に関するモデルを求める。 また、支援プログラムの開発について、生涯発達段階に応じた課題を整理し、国内外の状況を踏まえながら考察を進める予定である。 さらに、得られた研究成果について結果解析の精度を高め、論文発表を進めると同時に、広く周知を図る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度は、主にデータ情報公開用のホームページ作成と、データ収集のための旅費として使用した。 2020年度には、予定している論文投稿費やその他(英文校正費等)についての支出が必要となる。
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