研究実績の概要 |
本研究では定型発達児と発達障がい児を対象に,学習段階を連続的に捉えた移行促進的学習支援を行い,読み書き学習の獲得・段階の移行過程に付随した「読む」「書く」「見る」行動の変容を解明し,学習支援科学という融合領域を構築することを目的とした。2019年度の研究実施状況は以下の3点であった。①文章の読み理解向上に付随した視線パターンの変容の再分析:発達障がい児15名と定型発達児13名を対象に,文章全体を繰り返し読む方法と,文節を単位にした繰り返し読み訓練を用いて文章の読み理解支援を行い,訓練前後の視線パターンを計測した。その結果,文節を単位にした繰り返し読み支援の方が発達障がい児15名の文章理解が促進され,特に自閉症スペクトラム障害児においてその傾向が顕著であったことが見られた。さらには学習に付随した視線機能を分析することで,平均注視時間の増減が訓練前後で発達障がい児と定型発達児で異なることを明らかにしたものを論文化し,国際誌に投稿したものを修正再査読中である。②書字困難リスクとなる外的行動の予測:時系列的な刺激提示による文章視写訓練を行うことで,文章の視写所要時間だけでなく,視写時の視線逸脱回数が減少したことを明らかにした(大森, 2019, 8月)。また,画面注視割合が刺激提示時の60%以上のときに,刺激観察による単語学習が成立することを示唆したことを,国際学会で発表を行った(Omori, 2019 September)。③結果の伝播と展開:第37回日本行動分析学会において聞き手行動を活用した文章の読み理解支援を行うための,第57回日本特殊教育学会では読み書き教材作成に関しての自主シンポジウムを開催した。また読み書き視線パターンの関連を示した論文が掲載された(大森, 2019)。
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