これまで、コロナ禍の影響で新規の症例検討が困難であったことをふまえ、これまでのデータの整理をおこなった。 ・早産児では、視覚情報処理能力に低下があることは既報でも報告がある。視覚情報処理能力は、「読み」「書き」に関与する認知機能である。本検討では、極低出生体重児の小学校1年生38名に対してWAVESを用いて視覚情報処理能力を評価した。WAVESは日本人を対象として作られた検査であり、視覚関連スキル8領域の評価を行うことに加え、結果に合わせて弱点を克服するためのトレーニングドリルがセットとなっている検査である。その結果、目と手の協応、図と地、視知覚分析、視覚性記憶、図形構成に関する項目が通常級に在籍する小学校1年生に比較して有意に低下していることが分かった。 ・極低出生体重児の小学校1年生のうち読字の困難さを認めた12名と大阪医科薬科大学LDセンターを受診し読字の困難さがあると判断された小学校1年生54名の視覚情報処理能力をWAVESを用いて比較検討したところ、図形構成に関する項目が極低出生体重児では有意に低下していた。この項目は、図形構成能力を評価する課題であると同時に、実行機能や視覚性注意に関する力も関与することが考えられている。 ・視覚性注意課題の低下が確認されたことから、WISC-Ⅳで視覚性注意との関連があると報告されている絵の抹消課題の結果と同時期に行った学童期用視覚関連チェックリストの結果を検討した。その結果、手指の操作課題との関連が指摘された。 上記の結果より、就学後に視覚関連のチェックリストやWAVESを用いて視覚情報処理能力を評価することで学習の困難さを予見し、トレーニングを行うことで学習の困難さを軽減することができる可能性が示唆された。今後は、上記結果とトレーニング効果についての検証が課題となると考えている。
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