研究課題/領域番号 |
18K13233
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
奥村 安寿子 一橋大学, 森有礼高等教育国際流動化機構, 日本学術振興会特別研究員(PD) (60749860)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 英語 / 読み書き困難 / 音韻意識 / 発達性ディスレクシア / 検査開発 / 診断手順 |
研究実績の概要 |
令和3年度も、新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、新たなデータ収集ができなかった。そのため、令和元年度までに収集した一般中学生(1-3年生、計 629名)、および発達性ディスレクシアのある小学6年生(12名)の調査結果から、英語の読み書きと音韻意識の関連を精査した。その上で、現時点で最適と考えられる、英語読み書き困難の検査・診断手続きを策定した。 まず、アルファベット大文字の書き取りについて、中学生の大多数(87.6%)は満点で、発達性ディスレクシア児のほぼ全員(11/12名)が不完全であったことから、第1段階のスクリーニング項目とした。次に、アルファベット大文字の書き取りが完全であっても、英単語の読み書きに困難を示す中学生が一定割合(5-8%)いたことから、英単語の読み書き課題を第2段階の検査項目とした。音韻意識課題については、アルファベット大文字の書き取りが不完全な中学生と、発達性ディスレクシア児の両方が明確な低下を示さなかったことから、検査項目からは除外した。 これらより、英語読み書き困難の疑いがある児童生徒の検査・診断手順として、最初に大文字の書き取りを評価し、不完全であれば英語読み書き障害の判定と個別介入を要することとした。中学生については、大文字の書き取りに加えて英単語の読み書きも評価し、困難域に達していれば、英語読み書き障害の判定と個別介入を行う。一方、大文字の書き取りと英単語の読み書きが両方とも正常域にあれば、通常指導の継続と経過観察が妥当とした。 この検査・診断手順については、書籍で成果を公表しており、英語読み書き困難に対する教育的・医療的対応の早期化と適正化に貢献することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
英語読み書き困難の検査・診断手順については、これまでに収集したデータから一定の手続きを確立した。しかし、本研究課題の最終目的である小学生への実装は、調査の実施自体が困難な状況が続き、計画した調査も新型コロナウィルス感染症の拡大により相次いで中止となるなど、当初の計画よりも遅れている。したがって、課題全体の進捗状況としては、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
英語の読み書きと音韻意識について、小学生のデータを収集し、検査・診断手順の適応可能性と妥当性について検証する。発達性ディスレクシアのある児童生徒のデータについても、個別検査による収集を進める。特に、本研究の焦点である音韻意識については、中学生において英語読み書き困難との明確な関連が示されていないため、小学生と中学生の差異を検討し、学習段階に応じた検査・診断手順の確立を進める。これらの成果について、国際誌を中心に論文投稿や成果発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度も、新型コロナウィルス感染症の拡大により新たな調査やデータ収集を行うことができなかった。そのため、計上していた旅費を使用する機会がなく、物品費や人件費・謝金も抑えられた。これらは、令和4年度に調査やデータ収集が実施可能となった際に使用する。また、令和4年度は最終年度であるため、成果発表に係る英文校閲、投稿料、オープンアクセス費用等に使用することを予定している。
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