研究課題/領域番号 |
18K13235
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西岡 千文 京都大学, 附属図書館, 助教 (20801187)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 推薦システム / 情報推薦 / 学習分析 / 学術情報分析 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、大学生・大学院生を対象とした学術論文推薦システムを開発する。デジタル教材配信システム上で、表示中の講義資料に関連がある学術論文を自動的に推薦することで、大学生が最先端の知見・事例に触れる機会を創出する。 初年度である2018年度には、デジタル教材配信システムBookRoll上で学術論文・図書推薦システムを開発し、京都大学と九州大学で運用した。デジタル教材配信システムは、講義中および予習時・復習時に、講義資料を閲覧者のPC上で表示する。閲覧ページ、閲覧時間やマーカー箇所といった情報が学習ログとして記録され、学習分析に利用される。推薦システムのコンテンツとして利用するために、日本語のオープンアクセス論文のコーパスの作成を行った。推薦コンテンツへのアクセスと学習ログを分析した結果、デジタル教材配信システムの様々な機能を活用している学生が、より多くの推薦コンテンツにアクセスすることが判明した。機関リポジトリのコンテンツと日本語のオープンアクセス論文のアクセス数を比較すると、より幅広い内容をカバーしている日本語のオープンアクセス論文へのアクセスが多いことが判明した。 また、推薦システムの説明インタフェースの比較評価を実施した。説明インタフェースは「なぜそのアイテムが推薦されているか」という情報を示すことにより、ユーザの推薦システムに対する信頼度を向上させ、エンゲージメントを高めることが報告されている。本研究課題において、説明インタフェースは「推薦されている学術論文と講義資料がどのように関連しているか」について示す。30名の大学生または大学院生に対して、被験者実験を実施した。大学生・大学院生でそれぞれの説明インタフェースに与える評価が異なることが観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の2018年度の研究の進捗状況については、おおむね順調に進展しているといえる。
(1) 学術論文推薦システムを予定通りに開発することができ、京都大学で運用を開始した。(2) 京都大学のみならず、九州大学でも運用している。(3) より広く一般的なオープンアクセス論文のコーパスを作成した。(4) JCDL(Joint Conference on Digital Libraries)をはじめとした査読付き国際会議で発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度には、デジタル教材配信システムで記録された推薦システムへのアクセスログとその他の学習ログを利用することで、「どのような学術論文が、どのような大学生・大学院生の学習行動に、有益な影響(学習行動の活発化、成績の向上)を与えるか」明らかにしていく。どのような学術論文・図書がどのような学生の学習行動を活発化させたか解析することで、大学生・大学院生の学習意欲の向上を目指す学術論文・図書推薦システムを研究開発する。また、被験者実験を実施した際に、大学生から学術論文は難易度が高いということが観察されたため、推薦を生成する際に論文の難易度を考慮したり、図書などのその他の図書館コンテンツなどの推薦についても検討を行う。また、学術雑誌や国際会議で研究成果の発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
【次年度使用額が生じた理由】論文掲載料、国際会議参加費や旅費等の概算と実費の差より未使用額が発生した。また、オープンアクセス論文のデータセットの作成のために学生謝金を計上していたが、作成のために利用できるデータセットが公開されたことにより、研究代表者自身で作成を実施した。 【使用計画】国内外の学会参加費、論文掲載料に充当する。
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