本研究は,主体的・対話的で深い学びを実現する方法として注目されている協調学習の教材設計が,教師の経験と勘に依存しすぎているという課題を解決することを目的とする.そのために,協調学習教材の設計支援システムを開発し,システムの機能や有用な利用方法の検討を行う.今年度は,前年度の成果から得られた知見に基づき,協調学習の段階性について検討することを目的として,提案方法を利用して設計した教材を利用した授業を再デザインし,高等教育機関においてオンラインと対面それぞれでの実践を行い,データを収集した.また,最終年度としての計画どおり,教材設計支援方法の機能や有用性の評価を目的として,初等中等教育に携わる研究協力者と共に実践での検証に取り組んだ.具体的には,昨年度までに得られた知見である対話的な思考支援を用いて,教育実践を担当する教師自らが,教材の広さと深さを表現する階層図を作成することに取り組んだ.その結果,授業で取り扱う内容や学習目標によって,教師の思考支援として必要な視点に違いがあり,これまでに検討してきた学習の深さと広さに関する対話的支援だけでなく,より実践の文脈に沿った対話的な支援が必要であることが確認された.また,教育現場からのフィードバックにより,本研究が取り扱う教材の広さと深さを表現する階層図は,本研究のスコープであった協調学習の設計支援だけでなく,近年機会が増加している探究的な学びの評価支援としても期待できることが確認された.
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