現代の学習環境にはメディアがあふれている。学習に寄与する有効活用がある一方で、「ながら勉強」などと称される、集中や理解の妨げとなりうるメディア使用もある。本研究は、学習時のメディア・マルチタスキングの実態やその効果、それに関わる個人差要因等について検討することを目的としている。 令和四年度は、高校生と大学生を対象としたweb調査を行い、学習時のメディア・マルチタスキングと注意に関する問題や自己効力感等、学習に関する諸側面との関連を検討した。学習時のメディア・マルチタスキングは、高校生よりも大学生の方が頻度が高かった。高校生と大学生に共通して、学習に関連しない内容でのメディア・マルチタスキングは、“集中するのは難しい”“関係ないことを考えることが多い”といった注意に関する問題と正の関連がみられた。また、学習に関連する内容でのメディア・マルチタスキングは学習に関する自己効力感と正の関連がみられた。さらに、小学校高学年、中学生、高校生を対象とした3波パネル調査のデータを二次分析し、メディア利用が学業成績に及ぼす影響を検討した。いずれの発達段階においても、メディア利用時間が学業成績に直接的に及ぼす影響はみられなかった。高校生において、メディア利用時間が学習時間を媒介して学業成績に負の影響を及ぼすことが示唆された。 研究期間全体を通して、「授業中」と「授業外の勉強中」の2つの学習状況におけるメディア・マルチタスキングについて、学習に関連する内容でのメディア利用と関連しない内容でのメディア利用を区別した上で様々な変数との関連を検討した。その効果や影響について、学習者自身はポジティブな効果とネガティブな効果の両面を認識していることや、授業外の学習に関連しない内容でのメディア・マルチタスキングは学業成績にネガティブな影響を及ぼす可能性があることなどが示唆された。
|