医療分野の教育において、実体験による学修が困難な医療場面はシミュレーションを活用することが望ましく、シミュレーション教育プログラムの開発に対し期待が寄せられている。近年、模擬患者やシミュレータ(教育用マネキン)を活用した教育が普及しているが、moulage(特殊メイクの意、以下、ムラージュ)を活用した例は極めて少ない。その要因として、メイク技術の簡易化・標準化が課題であった。本研究代表者はこれまでの研究で、この簡易化・標準化の課題に取り組み、転写シールを用いたムラージュを作成してきた。この結果、シミュレーション教育におけるムラージュの新たな活用方法が見出された。 そこで、本研究では、これまでに研究代表者が行ったムラージュに関する成果を発展させ、実体験による学修が困難な医療場面のシミュレーション教育プログラムで活用できるムラージュ教材の開発することを目的としている。 令和5年度は、転写シール式ムラージュを用いたシミュレーション教材の開発、診察手技指導のサポートツールとしてのムラージュの開発を中心に研究を行った。具体的には、実体験による学修が困難な新生児・乳幼児の踵採血法(いわゆるヒールカット採血)のためのシミュレーション教材の開発に取り組んだ。既存の小児シミュレータにシールタイプのムラージュを付加することで低コストに作成することが出来たが、使用感や強度については、今後の課題である。 研究期間全体を通し、ムラージュを使った教材の開発に取り組み、既存のシミュレータに簡易に付加する形で使用できるムラージュを開発した。今後のシミュレーション教育の教材開発におけるムラージュの活用についての新たな知見が得られた。
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