本研究の目的は、eラーニング専門家の育成とeラーニングを提供する組織を強化するために、eラーニング専門家全体のためのティーチング・ポートフォリオ(以下TP)を拡張したシステムを構築し、その効果を検証することである。 TPは授業に関する振り返りを促す代表的な仕組みのひとつであるが、大学での導入は伸び悩んでおり、TPに記入を行う教員の負荷の高さが課題として挙げられている。対象者を教員だけではなくeラーニング専門家に拡張してTPを構築することを目的とした本研究においても、記入者の負荷を軽減させることは重要な課題である。フルオンライン大学においては学修管理システム等に蓄積された学修データをエビデンスとして参照することが可能であり、その学修データによって授業の実態を把握することができるが、これらのデータの収集と分析は、相当な負荷とデータ解析の専門的スキルを要する。この学修データを収集・分析し、記入者の授業への振り返りを促す「内省支援ツール」を開発することで、TPへの記入の負荷の軽減が見込まれる。 今年度は、内省支援ツールのプロトタイプの形成的評価のうち、昨年度実施した1対1評価の結果を受け、小集団評価を行った。小集団評価では教員以外のeラーニング専門家である制作担当やティーチング・アシスタント、教学責任者による評価を行い、より多面的な視野からの意見を得ることができた。この結果をもとに内省支援ツールを開発し、専任教員の協力を受け、実データを使用した試行を実施した。試行の結果では概ね肯定的な結果を受けることができたが、実運用に向けての課題としてガイドライン等の整備やピアレビューの必要性が確認された。
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