住友理工社製の体圧分布測定機器「SRソフトビジョン」を活用してビューワーソフトを改良し、指圧シミュレーターを作製した。今回はこれに加え音声フィードバック機能を組み込み、視覚障がい学生の運動感覚形成に即時効果が見られるかを検討した。具体的には視覚特別支援学校の理療科学生6名に指圧実技の演習の授業で使用し1人20分間指圧の練習をしてもらい、その前後に圧センサーを取り付けたバイタルモニタープロコンポ(型式ProComp Infiniti SA7500)で指圧手技を測定した。この結果、シミュレーター練習前の圧データの全員の10回平均は右母指が7.265±1.224、左母指が6.727±2.169、両母指同時圧しが右は6.627±2.164、左が6.523±3.152だった。同様に練習後は右母指が6.411±2.274、左母指が5.786±2.443、両母指同時圧しが右は6.057±3.189、左が6.137±2.399だった(いずれもkg/cm2)。これらのデータの練習前後のばらつきの変化には一定の傾向は見られなかった。一方、両側同時圧しの際に圧のピークのずれの変化については圧のピークがずれはなく同期した回数は練習前が10回のうち平均1.3±1.03回だった。これが練習後は5.3±2.2回に増加した。この結果はWilcoxon符号付き順位検定で有意であった(p<0.05)。昨年の結果と同様に、個々の母指圧について定量的な運動感覚の形成は十分とはいえない結果だったが、左右同時圧しの同期については統計的にも練習後に同期する回数が増加し、シミュレーターを使った練習によって運動感覚が形成された可能性があるという結果だった。機器の性能上の問題で圧刺激から音声変換までのタイムラグの短縮が今後の課題であり、またそれに加えさらに扱いやすい機器へのブラッシュアップが必要である。
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