研究実績の概要 |
本年度は,諸外国における科学論的内容の教授に関して,昨年度に引き続き文献分析を進めた。特に,ウィトゲンシュタインの家族的類似を科学教育における科学論的内容を扱う枠組みへと応用したIrzik & Nola (2011, 2014)と,Irzik & Nola (2011, 2014) を科学教育の文脈でさらに具体化し,洗練させたErduran & Dagher (2014) の提唱するアプローチを分析し,学会発表を行った。昨年度から延期した国際学会への参加に関して,2019年7月にギリシャで開催されたInternational History, Philosophy, and Science Teaching Group の学会に参加した。参加を通じて,西洋諸国だけではなく,アジアや南米なども含むさまざまな国における本研究主題に関する研究動向をより明確に認識することができた。どのように科学とは何かを捉えるか,また,どのような観点から教えるのかについて様々な立場が主張され,まだまだ合意に至っていない部分があることもわかった。加えて,他の研究者と意義のある意見交換ができた。 国内における科学論的内容の教授に関して資料収集を進めた。加えて,2019年9月に高等学校で科学論的内容を扱った授業を参観した。授業では,体内で生じる過酸化水素水を触媒が分解して無害化していることを検証する対照実験を生徒に計画させていた。その際,なぜ対照実験を行うのか,なぜその対象物を使用するのかについて生徒に考えさせていた。本授業では,実験・観察に関わる科学論的内容が取り扱われていたとみなすことができた。実験・観察は,理科の授業において日常的に行われる学習活動であるため,我が国の理科授業に科学論的内容を取り入れる場合は,実験・観察に関する科学論的内容の導入が比較的容易である可能性が示唆された。
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