本研究では,我が国の理科教育に適した科学論的内容の教授目的を明確にし,それに基づいた学習内容と教授方略を提案することを目的とした。1年目は,諸外国の代表的な科学教育研究者が著した科学論的内容の教授に関する文献を収集し分析した。2年目は,前年の文献分析を継続するとともに,国内における科学論的内容の教授に関する文献を収集した。また,本研究課題を中心的に扱う国際学会へ参加して最新の研究動向への理解を深めた。さらに,国内の高等学校で科学論的内容を扱った授業を参観して,実践的側面からの我が国における科学論的内容の教授への知見を得た。3年目は,体調不良により休職したため研究を進めることができなかった。最終年度である4年目は,まず,国内における科学論的内容の教授に関する先行研究を分析した。収集できた先行研究は,大きく二種類に分けることができた。一つは,科学論的内容の教授に対して理論的な側面からアプローチした研究群であり,諸外国の科学カリキュラムや教科書の分析などがなされていた。もう一方は,実証的な側面からアプローチした研究群であり,学習者の科学論的内容に関する理解の調査などがなされていた。次に,我が国における科学論的内容の教授が位置づく文脈を明確にするために,現行の小学校と中学校の理科の学習指導要領とその解説を分析した。最後に,これまでの調査結果を踏まえて,我が国の理科教育における科学論的内容の教授のあり方について考察した。
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