本研究課題は、高校化学教育の内容・方法を電子のレベルで基礎づける立場から、妥当なモデルを明らかにしようとするものである。従来のよく知られた物理的模型では材料的・素材的な制約により、複数の階層にまたがった化学変化の過程をダイナミックに表現できない。この限界を乗り越えるためには、材料的な制約を受けないVR・AR技術による視覚的・力覚的な表現が考えられる。そのためには、表現したい-表現できるモデルの要件を仔細に定義していく必要がある。しかしながら、デバイス・ソフトいずれの開発も変革期にあり、モデルに実装したい-できる妥当な要件を定義することは困難を極める。 そこで本研究課題では、ハード・ソフトの開発動向を注視しつつ、新しい化学教育のカリキュラム・教育内容・教材の開発に資する形で、本研究課題との関連で教育実践の評価(到達点と課題の把握)を進めた。 (1)2022年度に評価を進めた溶解の教育内容・教材については「もし粒が見えるとしたら・・・絵に描いてみよう」といった先行研究の妥当性を化学論的・認識論的に検討を進め、教授法の系譜と問題の構造を把握しつつある。(2)酸のはたらきにおけるきまり(ルール)についてルールシステムの観点から把握を進めた。(3)構造を物質の基礎的・基本的な量としての重さ・体積についてのカリキュラムを擬似閉合性の観点から検討した。(4)開発が不十分な体積の教育内容・教材について先行研究の評価(到達点と課題)を進め、不定形の体積の測定について「変換の原理」を重視するとの基本方針を得た。
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