本研究は、ドイツで関心が集まるプロジェクト活動を手掛かりにして、子どもが自然科学の知識を獲得するための方法を探るものである。特に、自然体験に特化したプロジェクト活動(以下、自然体験型プロジェクト活動と略記)に焦点化して研究を遂行する。 本研究は3年計画であり、最終年度に当たる2020年度は、日本の幼児教育施設において実践可能な自然体験型プロジェクト活動を開発、実践、評価することを主な目的とした。本目的の達成に向け、文献調査から導いたプロジェクト活動の方法に関する特徴を整理し、ドイツでの実地調査から得た知見を踏まえるとともに、研究協力園における子どもの実態等を総合的に勘案した上で、「氷・雪から水への変化」をテーマとした自然体験型プロジェクト活動を開発した。事例研究ではあるものの、子どもの科学的認識の変化を中心にしてその効果を検討した結果、主に、以下の事項が解明された。 第一に、雪から水、および氷から水への変化に関する認識は、自然体験型プロジェクト活動の実践後、多くの子どもが事実に即して現象を捉えるようになった。実践前後で比較したところ、有意に認識が変化した。第二に、水から水蒸気への変化に関しては、ほとんどの子どもが本現象を認識しておらず、実践前後で有意な認識の変化は認められなかった。以上から、自然体験型プロジェクト活動が子どもの科学的認識とその変化に対して一定の影響を及ぼし得ることが明らかになった。本研究で得られた知見をもとにして、今後、さまざまなテーマの自然体験型プロジェクト活動を開発することが可能であると考えられる。
|