2021度は授業実践を継続するとともに過年度までの研究成果をとりまとめた.加えて,今後の研究の展開を見据えた資料・情報収集を行った.研究期間全体を通した成果を以下にまとめる. 研究期間の当初2カ年においては,高等専門学校の低学年を対象にした土木と地理が連携したモビリティ・マネジメント教育の授業実践と学習成果の詳細分析に取り組んだ.その結果,地理での学習内容を踏まえて,都市交通問題を捉えようとする思考過程が確認できた.この事実は土木と地理の連携による学習内容のさらなる定着と,社会科科目の学習意義を学生に理解させる効果が期待できることを示唆している. 2020年度以降の2カ年は「コロナ禍における公共交通」を新たな学習テーマとして設定し,高専低学年を対象にした授業実践と授業成果の分析に取り組んだ.具体的には新型コロナウイルス感染症の拡大の状況において,1)公共交通を利用することへの恐怖心や気をつけるべきこと,2)コロナ禍で公共交通利用者が急激に減少していることを踏まえた自分や社会への中長期的な影響について考えさせる内容である.特に地理での学習内容である「都市の形成や人口集積」なども踏まえたテーマとした.学習成果のレポートを分析した結果,公共交通への影響を考えるなかで,公共交通利用の減少によって社会や自身にどのような影響があるかを認知し,公共交通の利用に前向きになる傾向を確認した.一方で,公共交通の利用は感染リスクが低いとされていることについて認識が弱く,公共交通機関における感染リスクが過大に捉えられている状況が窺えた. 本研究ではコロナ禍の影響もあって当初計画を大きく見直したことで低学年での実践に留まったものの,土木と地理の連携によって学修内容の定着や醸成に寄与することを明らかにするなど一定の成果を得たと考える.今後は,専門科目の学習段階に応じた授業設計とその効果検証が課題と言える.
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