研究実績の概要 |
本研究課題は、「被害者」とされる立場に対する、人々の態度形成フレームを検討することを目的としている。2022年度は2021年度に引き続き、被害者が被害発生後にとる行動が、第三者による態度に与える影響を検討するため、一般サンプルを対象にオンライン実験を実施した。実験参加者に、事故や傷害、ハラスメントなど、様々な種類の事例を呈示し、被害者に対する印象評定を求めた。その際、被害者の事後対応や性別の情報を操作した。696名のデータを分析したところ、主張的な対応をとる被害者(加害者の責任追及を表明し、主体的に行動している)は、操作した性別情報に関わらず、意志の強さと男性ステレオタイプ的パーソナリティ(以降エージェンシー特性と総称する)を有していると知覚されやすかった。そして、エージェンシーの特性知覚は、被害者へのポジティブな印象評定や共感、支援意図の強さを予測した。これらの結果は前年度の知見を補強するものであり、人々が「か弱い被害者」よりも相対的に「強い被害者」をポジティブに捉え、支援の意向も高くなることが確認された。一方、本研究では、エージェンシー特性知覚が、事例によって被害者非難と負あるいは正の相関を示していた。被害の性質や故意性などの要因が関わっている可能性があり、この点をクリアにすることが課題として残された。今後は、このフレームワークを拡張し、集団的な被害や、不公正への集合的な抗議がなされている状況を対象に含めて検討することが展望される。 上記に加え、本プロジェクトに関連する研究成果を日本心理学会第86回大会と日本社会心理学会第63回大会にて報告したほか、共著論文(Shimizu, Hashimoto, & Karasawa, 2022)と分担執筆の書籍(The International Handbook of Positive Psychology)が刊行された。
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