研究実績の概要 |
本研究は仮想的なカウンセリング場面を想定した実験室実験 (研究1), 高バーンアウト状態にある参加者に対して行う後向きコーホート調査 (研究2), 現在の仕事に対する情熱が将来のバーンアウト傾向に及ぼす影響について検討する前向きパネル調査 (研究3) などを用いた多角的検討によって, 「頑張りすぎた結果」 生じる典型的バーンアウトを操作的に定義し, その発生メカニズムについて検討することを目的とした。最終年度は, 専門職を対象とした場面想定法実験及び実験室実験結果を学術論文としてまとめた。専門職を対象とした実験においては, 学生対象の実験で認められた精神的消耗度の蓄積や情熱特性によるストレス場面への接近が認められなかった。実際の支援の場面では, 対人援助職は支援の経過に応じて, ある程度情熱の強度を安定させていることが示唆される。この結果は, 研究2におけるインタビュー調査において追認された典型的バーンアウトに至る人々の割合が非常に少ないこととや研究3のパネル調査において情熱得点が低下傾向にあったことも整合的であり, そもそも典型的バーンアウトは, 一部の対人援助職のみに出現する特殊な状態像であることが改めて浮き彫りとなった。 次に, 典型的バーンアウトを選択的に測定するため, これまで研究2において収集してきた質的データ (典型的バーンアウトエピソードに関するテキストデータ) を元に, 複数の専門職を対象としたインタビュー調査を行い, 尺度原案を作成した。尺度原案については看護師及び介護福祉士を対象としたWeb調査を行い, 現在その妥当性について確認中である。Covid-19の感染拡大によって研究計画の修正を余儀なくされた中で, 当初の目的であった典型的バーンアウト尺度の開発にまで至ったため, 研究計画は順調に進んだと言える。
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