研究課題/領域番号 |
18K13272
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
大薗 博記 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (50709467)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 協力 / 社会的ジレンマ / 公共財 / 罰 / 進化 / 集団 / リーダーシップ / ガバナンス |
研究実績の概要 |
本研究は、社会的ジレンマ(SD)の解決策として提示されてきた集権罰(集団成員が罰システムに資源を支援し、それを元手に罰を課す)について、システム管理者(集団の統治者)側の視点を導入して、「集権罰による統治は、いかにして生まれ、選択されるのか?」を明らかにすることを目的としている。当該年度は、前年度から引き続き、以下のような実験状況を設定し、統治者不在の対等な状況から、統治者が自生する条件を探った。具体的には、社会的ジレンマ(SD)ステージ→支援ステージ→罰ステージの流れを設定し、支援ステージでは誰が誰に対しても支援可能(もちろん、自分自身を支援してもよい)で、罰ステージでは誰が誰に対しても罰することが可能とする状況を実験場面として構築する。その中で、どのような条件がそろえば、特定個人への支援集中と、その人物による連動罰(SD非協力者も被支援者もともに罰する。安定的な協力を導く上で重要)の自生につながるかを明らかにすることを目的とした。当該年度は、貧富の差を所与として与えることで資源を豊かな個人による連動罰が起きると考え、実験を実施した。その結果、そのような結果は得られず、豊かな個人に対する資源集中は起きなかった。これは、不公平を忌避する傾向に起因している可能性があり、集権罰の自生を導く条件がかなり狭い可能性を示唆している。また、前年度から引き続き、「連帯罰(非協力者だけでなく、非協力者が生じた集団成員全体を罰する)」が集団協力にどのように寄与するかも実験的に検討した。その結果、「個人の貢献量が一人でも基準を満たさなければ、全員罰せられる」というルールより、「集団全体の総和が基準を満たさなければ、全員罰せられる」というルールの方が、高協力を維持する可能性が示されてきている。この点についても、今後の研究を進めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画そのものは、当初の予定の通り進行しているが、結果が予想に反していた。また、同一の研究目的から生じた「連帯罰」についても、新たな知見を得られたため、総合的にはおおむね順調だと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画である、「統治者と集団成員による罰制度選択」の研究に着手する。この研究では、複数の統治者(例えば3人)と複数の集団成員(例えば12人)がいる状況を実験室で設定する。役割は、ランダムに決定される。統治者は、自らの集団に所属した成員にどのような罰を課すかを宣言し、それを元に集団成員はどの統治者の下につくかを選択する。その結果形成されたそれぞれの集団の中で、「成員によるSD→成員による統治者への支援→統治者による罰」が行われる。そして、また、それぞれの統治者は次の期にどのような罰を課すかを宣言し、成員は今いる集団から移動するか留まるかを決める。このような状況で、どのような罰ルールが統治者、成員によって選択されるか、また、それは諸条件(「集団移動のための移民コスト」など)による違いがあるのかを検討する。また、連帯罰研究についても、システムによる連帯罰と個人間インタラクション(リワードや罰)がどのように相互作用するかを検討し、連帯罰が協力を促進する条件を探る。ただ、新型コロナウィルスの影響により、実験室での実験が困難となる可能性もあり、オンライン上での実験も含めて検討予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要なだけ使用したが、「集中罰の自生」実験について予想される結果が出ず、実験規模が縮小された結果、未使用額が生じた。翌年度の実験実施の経費として使用する予定である。
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