本研究は、社会的ジレンマ(SD)の解決策として提示されてきた集権罰(集団成員が罰システムに資源を支援し、それを元手に罰を課す)について、システム管理者(集団の統治者)側の視点を導入して、「集権罰による統治は、いかにして生まれ、選択されるのか?」を明らかにすることを目的としている。「統治者と集団成員による罰制度選択」の研究に着手する予定であったが、12人以上の集団を形成する必要があったため、ドロップアウトの多いオンライン実験で十分なデータを得ることは不可能と判断し、実施を断念した。しかし、この研究テーマについて、現在まで得られている知見と今後の展望を、論文としてまとめ、「動物心理学研究」にて発表し、一定の成果は得られた。 また、去年度から引き続き、「連帯罰(非協力者だけでなく、非協力者が生じた集団成員全体を罰する)」が集団協力にどのように寄与するかの実験室実験を実施した。具体的には、「自分は貢献しているのに、貢献していない他者のせいで自分も罰を受ける連帯罰の方が、怒りによる罰が増え、結果として協力が促進される」と考えたが、去年度までそれを支持する結果は得られておらず、今年度も罰強度を変えた実験を行ったが、やはり支持する結果は得られず、連帯罰の機能については、異なる視点から考える必要に迫られた。 さらに、コロナ禍において、オンライン実験のニーズが高まる中で、実験室状況とオンライン状況での行動の違いに着目した研究にも着手した。結果としては、一部の課題を除き、実験状況における顕著な行動の違いは認められず、オンライン実験の妥当性に一定の示唆を与えた。この成果は論文としてまとめ、PLOSONEにて査読後、受理された。
|