本研究の目的は、家事育児と仕事は重複している部分があるという認知が、家事育児と仕事の葛藤を低下させ、両立志向を高めるかどうかについて、若年層を対象に検討することであった。 初年度では家事育児と仕事の対立から生じる葛藤と両立志向の相関的関連性について検討するために、未婚者を対象に調査研究を実施した。葛藤と両立志向の関係性について検討したところ、葛藤を強く感じるものほど両立志向が低いという関連性が見いだされた。一方で、両立志向が強い女性は葛藤が低いことも明らかとなり、必ずしも両立を希望する結果、家庭と仕事の葛藤が生じるわけではないことが示唆された。 最終年度では、家事育児と仕事の関係性(対立vs. 重複)の認知が将来の両立志向に及ぼす影響について、その因果的関連性について検討するために、男女大学生を対象に2つの実験を実施した。いずれにおいても、家事育児と仕事の関係性の認知を言語情報により操作し、家事育児と仕事が重複している(vs. 対立している)という認知が、大学生の将来の両立志向を高めるかどうかを検証した。その結果、現在のところ、いずれの研究においても予測されたような結果は得られていない。言語情報による操作が妥当でなかった可能性があり、今後は操作方法を改善したうえで、再度検討していく必要があると考えている。 実験的研究では予測された結果は得られていないものの、調査研究では家事育児と仕事から生じる葛藤と両立志向には関連性があることが明らかになった。更なる検討は必要であるが、ワークライフバランスが目指される現代において、家事育児と仕事の両立を阻害する心理的要因を特定することは重要な課題であり、本研究はその解明の一助となることが期待できるだろう。
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