人は自己価値が低下する出来事(自我脅威)に直面した場合、自己価値を防衛、回復しようとする。このような自己防衛反応は、不適応行動を導くことが先行研究で示されてきた。近年、こうした不適応行動を低減するための方法として自己価値の肯定(自己肯定化)を行う手法が注目されている。本研究課題の目的は、不適応行動を導く自己防衛反応を低減するための効果的な自己肯定化の手法を開発し、検討を行うことである。 今年度はこれまでの研究成果をもとに、健康リスク情報に対する自己防衛反応とそれを低減する自己肯定化の手法について検討を行った(調査2件、実験1件)。主に、その自己防衛反応を低減する効果的な自己肯定化の手法として、個人が保持する社会対人的資源(ソーシャルサポートなど)の多寡を確認することの有効性を検討した。その結果、(1) 健康リスク行動に従事している人(例:過度の飲酒)は、そうではない人よりも、省庁のホームページ等で提示されているような実際の健康リスク情報の内容に対しても信ぴょう性を低く見積もる傾向があること、(2) 健康リスク行動に従事している人は、そうではない人よりも、当該の健康リスク情報を見た後に、自分自身の社会対人的資源(家族とのソーシャルサポート)を多く見積もる傾向があること、(3) 家族とのソーシャルサポートを多く認識する人ほど、その後提示された健康リスク情報をより受け入れる傾向にあること、が示唆された。これら一連の研究結果から健康リスク情報に対する自己防衛反応に対する効果的な自己肯定化の手法の1つとして、社会対人的資源の確認を行うことが有効である可能性が示唆された。今年度は研究成果報告として学会発表1件を行った。
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