研究課題
複数人でリアルタイムに協同するオンラインゲームにおいては,プレイヤー同士の集団活動経験が現実世界の社会的スキルの向上に及ぼす影響が,経験的研究において徐々に実証されつつある。しかしその問題点としては,集団活動の環境や求められる能力の多様性が十分考慮されていないこと,1時点データを用いて因果関係の検証がなされていることが挙げられた。したがって,本研究では,オンラインゲームのプレイヤーが目標達成のために活用される「合理的問題解決」能力について,ゲーム場面ならびに現実場面において3時点のパネル調査を行い,得られたデータを交差遅れ効果モデルによって分析を行った。その結果,仮想世界における「合理的問題解決」能力が,後の現実世界における「合理的問題解決能力」に対して有意な正の因果的影響を及ぼすことが示された。詳細には,オンラインゲームの一種であるMMORPGのプレイヤーを対象にした場合,合理的問題解決能力は4因子で構成され,各因子は「情報収集」「解決策の案出」「解決に向けての議論」「実行と検証」と命名した。なお,現実世界および仮想世界の両世界における合理的問題解決能力を測定しているが,因子構造は両世界において大筋で一致した。現実世界における合理的問題解決能力4因子,および,仮想世界における合理的問題解決能力4因子について,3時点のパネルデータを用いて交差遅れ効果モデルによる分析を行った。なお,その際,合理的問題解決能力に影響を及ぼすことが予測される,性格特性(BIG FIVE)および愛着(アタッチメント)についても統制変数としてモデルに含めた。その結果,仮想世界における「解決に向けての議論」から現実世界における「解決策の案出」「解決に向けての議論」「実行と検証」に対して有意な正の因果的影響が示された。
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