研究課題/領域番号 |
18K13286
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研究機関 | 大阪経済大学 |
研究代表者 |
藤原 健 大阪経済大学, 人間科学部, 講師 (00707010)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 対人コミュニケーション / 非言語行動 / シンクロニー / 集団的知性 / ウェーブレット変換 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,個人が集まることで集団として成果を発揮するという集団特性,つまり 集団的知性(collective intelligence)を実現するコミュニケーションの心理的・行動的な動態を 捉えることである。初年度となる2018年度は,申請者がこれまで提案してきたシンクロニーの検討手法を小集団コミュニケーション場面に適用し,得られる指標の妥当性を評価することを目的としていた。その前段として,年度の前半には2者間を対象とした会話実験を実施し,これまでに実施してきた実験の成果と合わせながら1)女性の方が男性よりもシンクロニーを起こしやすいこと,2)話者間の会話満足度を高めやすい特定の周波数帯があること,を明らかにしてそれぞれの知見を国際紙に掲載することができた。また,本研究課題で精緻化を試みているシンクロニーの計測方法について国際学会において口頭発表を行い,さらにこれを活かした国際共同研究も実施することができた。しかし,学内業務の過密化などの理由からデータ取得を年度後半にうまく行えず,小集団のコミュニケーション場面を対象とした実験では,課題の成績といったデータを取得することができたものの,精緻な測定環境のもとでコミュニケーション行動を計測するには至らなかった。それでも,集団でブレインストーミング課題(アイデア創出課題)を行った際の成績について,成員の「対人感受性」が高いほど集団としても課題成績が向上することが明らかにできた。対人感受性が高いほどコミュニケーション中にシンクロニーが生じやすいことが理論的に予測されるため,本研究で明らかにしたい「シンクロニーが集団的知性を高める」という関係を間接的には示唆することができる成果を得たと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度となる2018年度は,申請者がこれまで提案してきたシンクロニーの検討手法を小集団コミュニケーション場面に適用し,得られる指標の妥当性を評価することを目的としていた。その前段として,年度の前半には2者間を対象とした会話実験を実施し,その方法論の妥当性を確認するとともに,「コミュニケーションを円滑にすすめる際に重要となる周波数帯」の存在を明らかにすることができた。具体的には,1)女性の方が男性よりもシンクロニーを起こしやすいことを明らかにし,その成果はEuropean Journal of Social Psychologyに掲載された。また,2)0.5Hz~1.5Hzという周波数帯におけるシンクロニーが特に話者間の会話満足度を高めやすいことを明らかにし,その成果はJournal of Nonverbal Behaviorに掲載された。さらに,本研究課題で精緻化を試みているシンクロニーの計測方法について,104th National Communication AssociationのNonverbal divisionにおいれPanel talk(口頭発表)を行ってきた。そこでのChairと国際共同研究を実施することができ,そこでの仕事はJournal of Nonverbal Behaviorに掲載された。 年度の前半に取得したデータでは成果を残せた一方で,学内業務の過密化などの理由から年度後半にうまくデータ取得を行えなかった。小集団のコミュニケーション場面を対象とした実験では,課題の成績といったデータを取得することができたものの,精緻な測定環境のもとでコミュニケーション行動を計測するには至らなかった。そのため,「やや遅れている」という自己評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
2年目となる2019年度には,まず前半に予備的な小集団コミュニケーション場面のシンクロニー測定を進める。これに加えて,2019年9月より米国に1年間滞在することから,現地でのデータ取得を先に実施する方針に切り替えて対応する予定とする。日本でのデータ取得と米国でのデータ取得は,環境さえ同じにできればどちらが先に実施されても大きな問題とはならない。そのため,まずは米国でデータを取得し,帰国後,これと比較可能なように環境を整えてデータを取得する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度の後半にうまく小集団コミュニケーション実験のデータ取得ができなかったことから,参加者に支払う文の謝金が未処理であるため。また,物品として購入予定であったモーションキャプチャー・システムについて,安価でありながら信頼できるデータ取得の代替方法が見つかったため,前者の金額については,実験を実施することで使用してく予定である。また,後者については,本研究課題より得られた知見が国際紙に採択された際のオープンアクセス権の購入にあてることで,インパクト向上を狙う。なお,European Journal of Social Psychology誌に掲載された論文については,すでにオープンアクセス化しその費用を支出した。
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