研究課題
本研究の目的は,個人が集まることで集団として成果を発揮するという集団特性,つまり集団的知性(collective intelligence)を実現するコミュニケーションの心理的・行動的な動態を捉えることである。2年目となる2019年度は,実際に小集団コミュニケーション場面でデータの取得を開始し,話者たちの行動を解析することを目的としていた。また,年度の後半からはUniversity of California, Santa Barbaraに滞在することもあり,国際間比較のためのデータ取得を準備・実施する予定としていた。研究成果としては,本研究課題で精緻化を試みてきたシンクロニーの計測方法について国際学会において口頭発表を行い(2,289件の申請から72件だけ選ばれる口頭発表枠に採択された),新たに1本の論文を国際誌に投稿した。さらに,これを活かした国際共同研究も実施し,2本の論文を国際誌に投稿することができた(本報告書を作成する段階ではこれら投稿中の論文は審査中の段階であり採択には至っていない)。また,University of Baltimoreの研究者との共同研究も始まり,先方の倫理審査委員会の審査を経てデータを取得する準備が整った。しかし,小集団のコミュニケーション場面を対象とした実験については思うようにデータ取得が進まなかった。これは,年度前半は渡米の準備に予定よりも時間が取られたことと,年度後半はデータ取得が本格化する予定だった2020年3月の段階でCOVID-19の影響で大学が閉鎖されてしまったためである。ただし,これまでに取得した予備的データについては多角的に分析を進めており,次年度以降に成果として一部を発表できる見込みである。
3: やや遅れている
2年目となる2019年度は,実際に小集団コミュニケーション場面でデータの取得を開始し,話者たちの行動を解析することを目的としていた。また,年度の後半からはUniversity of California, Santa Barbaraに滞在することもあり,国際間比較のためのデータ取得を準備・実施する予定としていた。しかし,小集団のコミュニケーション場面を対象としたデータ取得は思うように進まなかった。これは,年度前半は渡米の準備に予定よりも時間が取られたことと,年度後半はデータ取得が本格化する予定だった2020年3月の段階でCOVID-19の影響で大学が閉鎖されてしまったためである。そのため,「やや遅れている」という自己評価を行った。
3年目となる2020年度は,前半は米国でのデータ取得,後半は日本でのデータ取得を進める。ただし,本報告書を作成している2020年5月現在,COVID-19の影響でUniversity of California, Santa Barbaraは閉鎖されており,いつ閉鎖が解除されるのかについても不透明な状態である。そのため,共同研究者である滞在受入れ教授と密に連絡をとりつつデータ取得のめどを立てるところから始める必要がある。できる限り申請者のデータ取得を優先してもらうように交渉を進める予定であるが,UCSB在籍の大学院生もデータ取得が滞っている(それに伴い課程修了が遅れるなどの影響も危惧される)ことから,交渉が難航する可能性も否定できない。その場合は,帰国後,日本でのデータ取得をより充実させる方向に切り替えることも視野に入れる。
年度を通じて予定よりも小集団コミュニケーション実験のデータ取得ができなかったことから,参加者に支払う分の謝金および行動データ整理を行うリサーチアシスタントに支払う分の給与が発生していないため。これについては実験を実施することで使用してく予定である。また,COVID-19の影響により今後もデータ取得が困難になる場合は,現在投稿中の論文が採択された際のオープンアクセス権の購入にあてる予定とする。これにより,本研究課題がもつ国際的なインパクトの向上を狙う。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件)
Journal of Nonverbal Behavior
巻: 44 ページ: 153-172
10.1007/s10919-019-00321-2