研究実績の概要 |
令和3 (2021) 年度は、新型コロナウイルス感染症に起因する世界情勢の混乱が結果に予期せぬ影響を及ぼす可能性を危惧し、研究計画を大幅に変更した。具体的には、以下2つの研究を実施した。第1に、幸福感研究において最も多く使用されており、本研究課題でも用いている人生満足度尺度 (Diener et al., 1985; 大石訳, 2009) の測定不変性を検討した。参加者はウェブ調査に回答した日本人10,165名 (女性51.1%;平均46.08±18.50歳) であった。多母集団確認的因子分析を行ったところ、性別 (男性、女性)、年代 (18-24歳、25-44歳、45-64歳、65歳以上)、地域 (北海道、東北、関東、中部、関西、中国・四国、九州・沖縄) いずれにおいても、配置不変モデル、弱測定不変モデル、強測定不変モデル、厳密な測定不変モデルが採択された。この結果は、人生満足度尺度が性別や年代、地域の違いを超えて日本人の幸福感をとらえられるツールであることを示唆している。第2に、佐藤剛介氏 (久留米大学) よりデータ提供を受け、日本における都市居住と人生満足度の関連を検証した。参加者はウェブ調査に回答した日本人1,600名 (女性50.0%;平均48.55±11.63歳) であった。重回帰分析を行った結果、性別や年齢、年収、パーソナリティの外向性などを統制してもなお、都市居住が人生満足度を正に予測していた。さらに媒介分析を行ったところ、関係流動性が都市居住と人生満足度の関連を部分的に説明していた。これらの結果から、日本の都市居住者は地方居住者よりも幸福感が高く、その理由は都市環境における関係流動性の高さによることが示唆される。こうした研究成果について、学会発表を今後行った上で、査読付き雑誌での出版を目指している。
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