本研究の目的は,人の集団の特徴(性格)を数値表現する方法を確立することである.成果として次の2 点を得た.(1)“集団エゴグラムの導出方法の確立”,(2)“導出された集団エゴグラムを個人のエゴグラムと同じように解釈し利用することができることの確認”.集団エゴグラムとは集団の性格を数値表現する方法であり,本研究では「エゴグラム」と「集団意思決定ストレス法(以下,ストレス法)」の2 つの手法を組み合わせることで実現した.「エゴグラム」は個人の性格分析に用いられる方法で,「ストレス法」は集団意思決定支援手法の一種である. チームスポーツ研究の分野では,各個人のエゴグラムを算術平均することで集団のエゴグラムを導出している研究が存在する.しかしながら,エゴグラムは5 つの指標が作り出すグラフの概形が重要な意味を持っており,全体的な大きさに差のある他者のエゴグラムとの単純な算術平均は適切ではない.グラフの概形を崩さずに,大きさを揃えて比較できるようにする方法が必要である. ストレス法を数学的にみると,“各個人のエゴグラムの意味(概形)を保ったまま,全員のエゴグラムのスケールを揃えてから平均をとる”ことができる.つまり,数学的には矛盾なく他者との合理的なエゴグラムを導出できる. これらを用いて集団の性格を数値表現する「集団エゴグラム」を新規に提案した.さらに導出した集団エゴグラムが,心理学的に本当にその集団の性格を表しているかどうかについて確認するための評価実験を行った.評価項目は「リスク志向性」「チーム指向性」「時間遵守傾向」「調和傾向」の4 項目とし、結果として評価項目全てにおいて集団エゴグラムの有用性を確認した. 以上について、2022年度中に国際会議および学術論文にて報告済みである。
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