研究実績の概要 |
本年度ではBig5パーソナリティを測定する紙筆版の潜在連合テスト(Implicit Association Test:IAT)を作成し、紙面調査及びWeb上のオンライン調査を実施した。PC版IATを作成した先行研究Grumm & Collani (2007) 、Steffens & Schulze-König (2006)で使用されたカテゴリ語および刺激語を翻訳し、「イメージのしやすさ」等について予備調査を行うことによって訳語を選択し、藤井・上淵(2010)を参考に紙筆版IATを作成した。妥当性を検討するため、Big5パーソナリティを顕在的に測定する質問紙(Neo Five Factor Inventory :NEO-FFI)との相関を求めた。 調査は大学の心理学講義の授業中に実施した。参加者を2グループへ分け、紙面またはWeb形式のどちらか一方のIATを実施した。1週間後に調査形式を入れ替えて実施した。得られた185名の回答のうち、2週ともIATとNEO-FFIの有効回答が得られたのは35名であった。 NEO-FFIの下位尺度では、2つの調査形式の相関は高かったが(rs =.81- .93, all ps < 001)、IATでは誠実性 (r = .45, p< .01) および神経症傾向 (r = .63, p< .05)のみ有意であった。IAT得点とNEO-FFI得点との相関については、紙面形式では外向性 (r = .37, p< .05) と神経症傾向 (r = .42, p< .05) 、Web形式では誠実性(r = .50, p< .01) と神経症傾向 (r = .34, p< .05)のみ中程度の相関があった。本調査では有効回答数が少なく、また作成されたIATの結果の不安定さが懸念される。今後さらなる調査およびIATの改良が必要と考えられる。
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