前年度の研究において、教師に相談することを促すような教師の働きかけ、生徒同士で相談することを促すような教師の働きかけ尺度を作成した。中学生を対象に質問紙調査を行い、本研究の尺度が一定の妥当性と信頼性のあるものであることを確認した。一方で、生徒が認識しにくい働きかけであっても、教師としては行っているの可能性も考えられた。そのため、教師を対象に質問紙調査を行い、教師はどの程度の働きかけを行っていると考えているのかを確認した。また、上記の2つの働きかけを行っている程度と教師自身の相談スタイルとの関連を検討した。教師としての経験年数が高いほど、上記の働きかけを日常的に行っていると回答する傾向が高かった。さらに、比較的どのような悩みでも他者に相談するスタイルを持つ教師は生徒同士で相談することを促すような教師の働きかけを行いやすいこと、悩みがあっても他者に相談せずに一人で抱える相談スタイルを持つ教師は生徒同士で相談することを促すような教師の働きかけを行いにくいことが示唆された。 また、前年度の研究では、どのような生徒が教師の働きかけの影響を受けやすいのか、教師の働きかけを生徒がどのように捉えたのかまでは明らかにできていなかった。そこで、本年度は、特に「生徒―生徒間の援助要請を促す働きかけ」に着目し、教師の働きかけを受けることで学校生活(学習面)を対して積極的に取り組みやすくなるという、生徒個人内の影響過程を検討した。その結果、まず、学業的面の有能感だけでなく社会面の有能感もともに高い中学生が、学習面に対して自律的に他者に相談することが示された。特に学業面の有能感の低い生徒や社会面の有能感の低い男子生徒に対して,教師が生徒同士の援助要請を促すことの有効性が示唆された。 なお、以上の研究は、次年度以降学術論文として投稿予定である。
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