研究課題/領域番号 |
18K13299
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
畑野 快 大阪府立大学, 高等教育推進機構, 准教授 (50749819)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アイデンティティ / 精神的健康 / 青年期 / 経験サンプリング |
研究実績の概要 |
2019年度は、それまでの縦断データの論文化と2018年度に収集したデータを解析し、結果としてまとめた。特に後者に関しては、1周間連続で収集した経験サンプリングデータに対して、測定尺度の妥当性を確認的因子分析によって検討し、単項目で日常的アイデンティティの感覚を測定する手法を確立した。さらに、日常的アイデンティティの感覚が精神的well-beingに及ぼす影響について、Random-Inctercept Cross-Lagged Panel Modelによって検討した。このモデルは、変数間の因果の方向性について個人間ではなく個人内のレベルで明らかにすることが可能であり、個人間よりも因果の方向性に踏み込んで明らかにする事ができる。このモデルを用いて検討した結果、アイデンティティの感覚が心理的健康に及ぼす因果の方向性が明らかになった。これまでのアイデンティティと精神的健康との関係を検討した研究が、1年間など長期的なデータに基づいていたことに対して、本研究は日常的に感じているアイデンティティの感覚と精神的健康との関係を実証的に明らかにした。これは、日常的な観点から人の精神的健康に対してアイデンティティが果たす役割を明らかにした点に意義がある。また、Random-Inctercept Cross-Lagged Panel Modelを用いてアイデンティティと精神的健康との関係を明らかにした研究は世界的にみて例がなく、極めて先進的な試みといえる。これらの成果に関しては、日本心理学会題83回大会、The 26th annual ISRI conferenceなどで報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では日常的な感覚を測定する必要があるが、このような異常時においては(i.e., コロナウイルスによる自粛状況)、普段とは感覚が異なっていることが予測される。そのため、2019年度に実施する予定だった調査を実施することができなかった。このような理由から研究が当初の予定より遅れることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は2019年度に実施できなかった調査を実施し、解析を行う予定である。具体的には、経験サンプリングデータを2週間に渡って収集する。その際、項目だけでなく日常的なライフイベントも測定する。そうすることでどのようなイベントによってアイデンティティがゆらぎ、またそのゆらぎが精神的健康にどのように影響を及ぼすのかを明らかにすることが可能となる。この仮説を検証するために、ライフイベントによって調査対象者を分類し、集団ごとにRandom-Inctercept Cross-Lagged Panel Modelを適用し、アイデンティティと精神的健康の関係を明らかにする。これらの成果をChild Development誌、Journal of Personality and Social PSychology誌に投稿予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの影響で2019年度に実施する予定だった調査が実施できなかったため次年度使用額が生じた。2020年度はコロナウイルスによる自粛が全国的に収束し次第、2020年12月と2021年2月にそれぞれ調査を実施する予定である(1回あたり90万円かかる見込みである)。それ以外の予算については物品費や英文校閲費として使用する予定である。
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