研究課題/領域番号 |
18K13310
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
上宮 愛 金沢大学, 人間科学系, 講師 (50555232)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アナトミカル・ドール / 子どもの証言 / 司法面接 / 再現 / エピソード記憶 / 性的虐待 |
研究実績の概要 |
本研究では,子どもの性被害・性的虐待における被害内容の聴き取りにおいて,アナトミカル・ドール(anatomical doll;以下,ADとする)と呼ばれる人形を 用 いることの効果についての検討を進めている。体験した出来事の内容についての聴き取りにおいて,ADを用いることの問題は,大きく分けて2つあると考えられ る。1つ目は,人形側の要因であり,もう一つは,報告する側の(子ども,言葉での報告に難しさがある人々など)の要因である。 人形側の要因については,ADが 持つ特徴(性器の有無など)が,特に性被害体験を聴き取る際に誘導的に働く可能性があるという点である。子どもへの性被害の聴き取りにおいて,ADのように一 般的なものとはその特徴が大きく異なる人形を用いることについて は,従来よりその危険性が指摘されてきた。しかし,先行研究では単に人形を用いた報告と 言語のみによる報告の違いを比較したものがほとんどであり,人形の 持つ特徴について検討した研究はない。本研究では,倫理的な問題(性器など)を取り除 いた形で,ADの特徴を再現し,人形の目立った身体的特徴(例,しっぽ,髪の毛など)が,子どもの身体部位を含めた体験の報告にどのような影響を及ぼすのか を検討する。合わせて,子どもの基礎的な認知能力と,人形などの補助物を用いた出来事の報告の正確性や情報量との関連を調べる。研究計画の 見直しを進め,実験で使用する道具の作成を終えた状況である。また,研究成果の社会還元として,警察・検察を対象とした「被害者支援と聴取(司法面接)に関する心理学講座」において,『出来事の聴取において補助物(人形等)を用いることの効果と問題』の題目で国内の実務家(警察官・検察官)274名を対象に,被害児童への事実確認において,人形などの補助物を用いることの問題に関わる研究知見の提供を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
データ収集においては,新型コロナウィルスの蔓延により,実験参加者の募集に協力を得られる幼稚園,小学校等の確保や,実験者の確保の困難さ等により,対面での実験の 実施が難しい状況にあった。オンラインでの実験実施についての検討も行ったが,補助物(3Dの立体物)を使用して体験した出来事についての報告を行わせる ことの効果を調べるという,本研究の本質的な部分についての検証が難しくなるという点で,対面での実施が必要であるとの判断に至り,実験が開始できない状 況にあった。
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今後の研究の推進方策 |
準備が出来次第,データ収集を開始し,分析,論文執筆を進める予定をしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ収集が遅れているため,参加者謝金,また,実験実施に関わる実験者の雇用のための費用が未使用である。実験のための準備が整ったため,速やかに実験 の実施を進める。さらに,米国の被害児童への聴取においてアナトミカル・ドールを使用する面接技法習得のためのトレーニング・ プログラムを視察する予定 であったが,新型コロナウィルスの蔓延により海外出張が難しい状況にあった。
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