研究課題/領域番号 |
18K13316
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松村 舞子 (野中舞子) 東京大学, 大学院教育学研究科(教育学部), 講師 (30791941)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 強迫性 / 衝動性 / 児童・思春期 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,児童・思春期の強迫スペクトラム障害を対象として,強迫性と衝動性の関係性の構造理解及び支援の発展に寄与することであった。 今年度は,臨床評価研究及び介入効果研究を行うための体制を整えた。まず,当初の研究計画にあった通り,本学相談室における「子どもと若者の発達障害系のこだわり」に対する認知行動療法の研究プログラム,および「子供と若者の強迫性障害」に対する認知行動療法プログラムの担当者とともに,評価バッテリーの見直し,および運用の仕方を見直した。その結果,強迫症状だけではなく,自閉スペクトラム症を有する者に特有の反復行動についての評価も確立させていく必要があること,発達早期の情報も取得することで,事例の改善に寄与できる可能性があることが検討された。議論に基づき,評価バッテリーが見直された。加えて,CY-BOCS-ASDのバックトランスレーションを実施し,日本語版を作成した。 次に,実際に来談した者に対して実施した評価や質問紙の二次利用について,倫理委員会による審査を経て,来談者にとって不利益が生じない形で,同意を取得し,発達の早期の段階で見られた特徴と強迫症状の関係性について理解を深めるための研究を開始した。臨床評価には経験ある臨床家による半構造化面接も行われるため,その体制を今年度は整えて,探索的に1例に同意を取得し,評価を実施した。今後は,継続的に臨床評価を行うことで,本研究の目的の1つである,強迫性と衝動性の関係性についての解析を進めていく予定である。 また,衝動性を伴う強迫スペクトラム障害の1つである,トゥレット障害についての研究成果をアメリカ児童青年精神医学会で発表し,関連する領域の研究者と議論し,改めて,強迫スペクトラム障害を有する児童・思春期の患者への支援の際に,社会的要因に着目する必要性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
過去の事例の解析を一つの成果として検討を進める予定であったが,そもそも評価体制自体に見直しが求められることがわかり,検討に時間を要した。加えて,海外の尺度の翻訳が必要になるなど,実際に臨床評価を実施する体制を整えるまでにも時間がかかった。今年度整えた土台の元,引き続き同意取得とデータの解析を進めていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
まずは,今年度整えた体制に基づいて,引き続き同意をとれた対象者のデータの解析を進める。関心が近い大学院生と連携をして同意取得等できる体制を昨年度確立できたため,20-30件程度のデータの取得は可能だと考えられる。その結果を解析し,衝動性の傾向が強い強迫性障害とそれ以外の強迫性障害の特徴の際の検討に加え,早期の行動特徴に共通項があるかどうか解析を進める。ある程度データの取得が進んだ段階で,連携機関での評価実施の打診をし,サンプルサイズの拡大に努める。 その研究結果に基づき,並行して,衝動性を伴う強迫性障害の親を対象とした心理支援のプログラムを開発する。現在国内外の研究の文献レビューをまとめており,その成果は学術論文として今年度中に投稿する。その結果を受けてて開発したプログラムに基づいて,探索的な内容の検討を今年度に実施する予定である。文献のレビュー,専門家内での検討,実際の探索的なプログラムの実施を通して,翌年度以降に集団で介入比較研究が実施できる体制を整える。その際に,臨床評価を適切に実施できる評価者の存在が不可欠であり,その養成を並行して行うことが今年度の課題である。 なお,今年度研究代表者が産育休に入る予定であり,必要に応じて計画を見直す必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度内に実施する予定であった評価者への謝金について,臨床評価及び同意の取得を行う予定が年度内に想定したよりも少なかったため,謝金支出予定分に残額が発生したため。評価依頼を進めており,今年度は想定通りの謝金の支出が想定される。ただし,研究代表者の産育休取得に伴い,計画に見直しが生じる可能性がある。
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