研究実績の概要 |
今年度の目的は,昨年度までの研究から得られた示唆を検討するための追加調査の実施と成果報告であった。まず,今までの研究から,幼少期であってもこだわり行動や強迫症に困る子どもが存在し,支援をすることが有効であること,その際感覚特性についてもアセスメントをすることで状態理解が深まることが示唆されてきた。そのため,感覚特性と気質的な不安の感じやすさ(行動抑制)やこだわり行動との関係を検討した。3-8歳の子どもを持つ保護者203名を対象とし,3ヶ月を開けた縦断調査を実施した(2時点目の回答者数182名,内分析に活用可能なデータは143名:子の平均年齢6.23歳)。その結果,先行研究に示唆されている通り,反復行動と感覚過敏性は有意な関連が示唆された(Time 1:RBR-Sと感覚プロファイルの相関: r =.59)。有意な関係性の多くは,SDQの社会性の問題を統制しても残存した。一方で,行動抑制と反復行動にも関連は見られたが,同様に社会性の問題を統制したところ有意差は確認できなかった。このことから,発達特性の影響を除いても,感覚の問題と反復行動には関連があると考えられる。 また,成果報告として,昨年度の研究実績を国際学会(IACAPAPA, Nonaka,2023)で発表した。低年齢におけるオンラインでの行動療法の実施可能性について,アジア諸国からの参加者と議論する機会を得た。国際学会で発表した内容は論文投稿準備中であり,縦断研究のデータは2024年度に国内学会にて発表後,論文化を進めていく予定である。
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