研究課題/領域番号 |
18K13319
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研究機関 | 聖路加国際大学 |
研究代表者 |
佐藤 聡美 聖路加国際大学, 専門職大学院公衆衛生学研究科(公衆衛生大学院), 講師 (50597804)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 小児 / 脳腫瘍 / 認知機能 / WISC-IV |
研究実績の概要 |
日本における小児がんの発症例数は、年間およそ2,500である。小児がん患児の生存率は、1970年代後半から世界的に向上しており、本邦においても高くなっている。ところが、小児がん経験者を長期にフォローアップしていくと、治療後の後遺症として晩期合併症が明らかになってきた。小児がんの場合、子どもの成長過程において、化学療法、放射線療法、外科的療法などを行うため、治療後の発育に影響を及ぼすことがわかってきたのである。晩期合併症には、低身長や不妊などの内分泌学的異常や心臓・肝臓・腎臓などの臓器障害があり、近年では知的な能力を含む認知機能への影響が懸念されている。認知機能の水準は、子どものその後の人生を方向づける重要な因子である。進学時も就学時も、それらの水準は選択に影響を及ぼす。特に脳腫瘍は、直接脳に侵襲を加える外科療法に加え、原疾患そのものが脳に及ぼす影響が大きい。先行研究では、小児脳腫瘍患者にはWISC-IV知能検査において、注意力、情報処理速度、記憶(特に作動記憶working memory)、言語理解、視覚-運動協応などに障害がみられるという報告が多い。ほとんどの先行研究では、群平均により中程度から軽度の知的障害あるいは境界値に該当すると報告されている。しかし、言語能力の顕著な低下は見られないため、外来受診時に認知機能が問題視されないとも考えられている。加えて、知能水準が境界値の場合は、知的障害の手帳取得には該当しないため、治療後の長い人生において機能不全がみられても、十分な福祉サービスが受けられない可能性がある。おそらく、認知機能の低下の程度は患者個人ごとに差が大きいと思われ、個別的に知的な能力の把握に焦点をおく必要性が高いと考えられる。そこで小児の脳腫瘍の認知機能の検査について研究計画を立案し、倫理の申請を行い、新規に登録された症例から検査の実施を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りに検査スケジュールを組むことができている。
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今後の研究の推進方策 |
成人領域におけるがん治療の改善と就労支援の課題解決が焦点化される一方、子どものがん治療後の教育支援および就労支援に関してはほとんど体制化されていない。特に、子どもにとって認知機能の水準は、治療後の教育と就労の方向を決定づける重要な因子である。そこで、本研究は、小児がんの中でももっとも認知機能のリスクが懸念される、脳腫瘍の治療後の子どもたちを対象に、将来の教育支援および就労支援に役立てる。今年度は検査間隔を一定に保ちながら、引き続き検査を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、小児がん国際学会が日本国内で開催されたため、旅費使用に変更が生じたため。
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