研究課題
小児がんの中でも、脳腫瘍経験者の長期的な予後はいまだ不明である。頭部の外科的治療や放射線治療の直接的侵襲を伴うため、治療後の知的障害、遂行(実行)機能障害、注意障害など、種々の認知機能障害が懸念されている。これらの障害は、学業や就労に影響を及ぼし、社会参加を妨げやすい。まずは、将来の教育支援の参考データになる、脳腫瘍経験者の知的水準を多施設の協働により把握した。WISC-IV知能検査を実施した結果、本研究に登録できた22名の脳腫瘍経験者は軽度知的障害から境界域の知的水準であった。境界域の経験者らは知的障害に該当しないため、通常学級に通っていたものの、学業不振がみられた。日常生活でも、見通しを持って生活することが難しかったため、遂行(実行)機能障害を検討するためにDN-CASの検査を加えた。その結果、プランニングの能力が低かった。つまり、知的障害には該当しなくても、遂行(実行)機能は弱い一群がいることが明らかになった。さらに、学業不振者のなかで黒板の転写に困難を示す者には、読み書き障害の検査を行った。その結果、視覚情報から音声情報に処理する過程で困難がみられた。これは、学校の教科書を読み込むことが難しいことが示唆された。また、末梢神経の運動が乏しく、書字困難がみられた。したがって、小児脳腫瘍経験者は知的障害に該当しない者であっても、遂行(実行)機能障害や読み書き障害をもっている可能性があり、それが学校生活や日常の活動を困難にしていることが明らかになった。今後は、これらの困難を軽減するために、タブレット端末の支援を教育や日常生活に取り入れていく必要がある。
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