わが国でのうつ病患者は増加傾向であり、軽症の段階で適切な治療を開始することへのニーズが高まっている。しかし、うつ病の病態生理は不明な点が多く、治療が長期化してしまう傾向にあるのが現状である。うつ病に対する治療で用いられる精神療法に認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy: CBT)がある。CBTは、うつ病の症状改善のみならず、自らのストレス因を明確にし、症状が発生する仕組みや維持される仕組みを把握することが出来るため、ストレスマネジメントが可能となり、社会適応の向上につながっていると考えられる。本研究では、大うつ病性障害に対するCBTが、抑うつ症状だけでなく社会適応にどのような変化を及ぼすかを予備的に検討するものである。2018年6月18日に、本研究についての倫理審査を浜松医科大学臨床研究倫理委員会に提出した。同年6月29日に承認が得られた。その後、研究協力者と共に、対象となる大うつ病性障害患者のリクルートを開始した。当院当科の外来に加え、複数のクリニックに協力を依頼した。リクルートされた研究協力者に対して同意書を取得した後、研究を開始した。CBT導入前に抑うつ症状、社会適応を心理検査を用いて評価した。評価後、CBTを用いて大うつ病性障害の治療を開始している。CBTを全16回のセッションでおこない、全セッション終了後に再度、抑うつ症状、社会適応について心理検査を用いて評価をおこなう。 リクルートの結果、5名の研究協力者が得られた。全16回の認知行動療法のセッションをおこなうことで抑うつ症状の低下が見られたほか、社会適応の向上についても一定の改善が見られた。
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