研究実績の概要 |
本研究は、がんの進行・再発に伴い治癒不能と告知されたがん患者の精神的問題に焦点を当て、その心的外傷後成長(Posttraumatic Growth)を目指した集団精神療法プログラムの開発と、研修会等の開催による普及を目指す実践的研究である。 がん患者にとって進行・再発は「治癒不能」を意味し、その破局的な心理的打撃から精神的健康の悪化が指摘されている。しかし、申請者のこれまでの研究から、治癒不能がん患者を対象とした集団精神療法によって、精神状態の維持・改善がはかられ、心的外傷後成長に至る可能性が示唆された。本研究では、心的外傷後成長を生起させる集団精神療法の具体的な要因を明らかにし、①治癒不能がん患者の心的外傷後成長を目指した集団精神療法プログラム(GP)を治療法として確立させ、②がん医療に携わる臨床心理士や精神科医などを対象に研修会を開催し、精神医学的治療の選択肢としてがん医療に普及させることを目的としている。 本年度は、目的のひとつであったGPプログラムにおけるPTG生起に至るプロセスとGPの機能の解明を中心に、これまでの逐語録の確認、解析準備をおこなった。 分析の対象は50名(女性42名、男性8名)、平均年齢59.9(±10.63, range: 38-87)歳、がん種は乳がん(n=13, 26%)、大腸がん(n=10, 20%)、膵臓がん(n=7,14%)、肺がん(n=4, 8%)、胃がん(n=3, 6%)、子宮がん(n=3, 6%)と続いた。また、本研究の実施中に対象者の1名にthiamine deficiencyが確認され、患者への介入研究において最も注意すべき点であるため、生理学的な指標を用い発表を行った。さらに、患者のみならず治癒不能がん患者の家族・遺族との関係性という点にも着目し、言葉かけに関する研究結果についても発表を行った。
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