本課題の目的は、レジリエンス(ストレス状況における適応・回復力)を促進するための臨床心理学的介入において、レジリエンスを単に「高める」のではなく、自分なりのレジリエンスを「発揮する」ことを目指すアプローチを開発することであった。 平成30年度より、投影法を用いた質問紙調査データの分析と、大学生を対象にした対面実践の試行を通して、「主観的イメージに気づくワーク」「レジリエンス観に気づくワーク」「時間的特性に気づくワーク」「関係的特性に気づくワーク」を順次考案し、それらのワークとグループでのシェアリングを通して自身のレジリエンスを多面的に理解しプロフィールとして記述するためのオンライン・グループ・プログラムを構成した。 大学生を対象とした試験的実践を行い、適用性を検討した結果、投影法ワークを通して社会的規範への気づきを得られること、シェアリングを通して自分と他者との違いに目を向けることができることで、自身のレジリエンスの承認と受容が促される可能性が示唆された。 その結果をもとに、セルフワークとして取り組むことのできるwebプログラムの開発・実装を行った。webプログラムは自己記入式(選択式)ワークと解説から構成される全8セッションであり、個人のペースでスマートフォンやPCから取り組み、最終的に自己理解を深めるプロフィールを作成することができるようにした。令和5年度は、成人を対象にウェイティングリストコントロールデザインを用いた効果検証を行い、介入による主観的幸福感の向上が示されたほか、終了後にも日常生活の中での気づきが促されることが示唆された。 対面/オンライン、グループ/セルフワーク、という多様な形式で実施可能なプログラムが開発され、その利点と効果の違いについても検討することができたことで、今後、対象に合わせてより有用な形を選択していける可能性が拡げられた。
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