研究課題
2020年度には、大学生を対象とした3つの研究を行った。研究1では、出来事の発生の原因の少なくとも一部が、自身の行動やパーソナリティにあると想定される従属出来事と、出来事の発生が、自身の行動やパーソナリティとは関連しない独立出来事という、異なる性質を持つネガティブな出来事の経験頻度を測定する尺度の作成を行った。心理学を専門とする大学教員や大学院生、および現場で働く心理士に対して行った予備調査の結果を踏まえ、ネガティブな対人従属出来事、ネガティブな非対人従属出来事、およびネガティブな独立出来事の3下位尺度から構成される、ネガティブな独立・従属・出来事尺度を作成した。国内の2大学の大学生に対して、作成された尺度と、他の関連する尺度に回答を求めた結果、尺度のある程度の構成概念妥当性が確認された。研究2では、国内の4大学の大学生201名を対象に、8週間の間隔を空けて2度調査を行い、攻撃行動が反すうや抑うつに影響を与える過程について検討を行った。分析の結果、攻撃行動が、8週間後のネガティブな対人従属出来事の増加と関連し、ネガティブな非対人従属出来事とネガティブな独立出来事とは関連しないことが示された。一方、どの出来事も8週間後の反すうとは関連が認められず、また、反すうは8週間後の抑うつと関連が認められなかった。以上の結果から、過去2年間に行った研究で示唆された、抑制機能が反すうや抑うつを導く過程に関する仮説の一部が支持された。研究3では、2大学の大学生64名を対象とした実験を行い、日本語版Brief State Rumination Inventoryの妥当性の検討を行った。その結果、尺度の高い妥当性が示された。
1: 当初の計画以上に進展している
新型コロナウィルス感染症の感染拡大により、データ収集が困難ではあったが、本研究課題の進展に繋がる結果が得られたため。
まずは2020年度に得られた研究結果の論文化を進める。その上で、2020年度に行われた縦断研究の補完的な検討を行うか、あるいは、過去3年間に行った研究を発展させる研究を行うことを予定している。
当初、参加者に謝礼を進呈することを予定していた研究について、謝礼を進呈しない形に変更したため。2021年度の助成金については、これまでに取得した研究結果の論文化のために掛かる英文校閲の費用や、論文のオープンアクセス化の費用に充て、また、研究の実施に掛かる雑費や謝礼の費用にも充てる予定である。
すべて 2021 2020 その他
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 6件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Current Psychology
巻: - ページ: -
10.1007/s12144-020-01287-x
Scandinavian Journal of Psychology
巻: 62 ページ: 118-124
10.1111/sjop.12679
巻: 39 ページ: 1543-1551
10.1007/s12144-018-9853-3
10.1007/s12144-020-00804-2
感情心理学研究
巻: 27 ページ: 83-94
10.4092/jsre.27.3_83
東海学院大学紀要
巻: 14 ページ: 67-78
10.24478/00003724
巻: 14 ページ: 31-40
10.24478/ 00003721
http://ahasegawa.com/