研究実績の概要 |
本研究は、性別違和感を感じている一般小中学生を対象として、性別違和感とメンタルヘルスや心理社会的不適応との関連、性別違和感が小学校高学年から中学生にかけてどの程度安定しているものか、あるいは変動するものなのかということを明らかにするための研究である。2022年度はこれまでに引き続き、同じフィールドで小学校4年生から中学校3年生までの約5,000名を対象に質問紙調査を行った。性別違和感の安定性の調査のためには、同じ対象者に継続的に調査を行うことは必要不可欠であり、これまでと同規模の調査を継続して行えたことは成果である。性別違和感を測定するための項目に加え、抑うつ・攻撃性というメンタルヘルスに関する項目、友人関係ストレス・家族ストレス・教師ストレス・学業ストレスという心理社会的不適応に関する項目も調査することができた。性別違和感の安定性については、これまで収集した3つのコホートから得られた6年間の縦断調査のデータ約2,000名を用いて、絶対的安定性と相対的安定性という二つの観点から安定性を検討した。その結果、小学生から中学生にかけて性別違和感の安定性が高くなっていく(揺らぎが小さくなっていく)こと、男子よりも女子で安定性が高いことを見出した。また、性別違和感の変化のパターンに関する分析において、性別違和感をほとんど感じない群(74.5%)、3~5年に渡り高い性別違和感を示す2群(2.8%)、1~2年以内の性別違和感の高まりを示す8群(22.6%)が見出された。これらの結果について論文として成果を公表することができた。今後は、こうした群ごとの性別違和感のありようと心理社会的不適応の関連を検討することによって、一般小中学生における性別違和感の理解を深めることが可能となる。
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