研究実績の概要 |
本研究は、一般小中学生を対象として、性別違和感とメンタルヘルスや心理社会的不適応との関連、性別違和感が小学校高学年から中学生にかけてどの程度安定しているものか、あるいは変動するものなのかということを明らかにするための研究である。2023年度はこれまでに引き続き、同じフィールドで小学校4年生から中学校3年生までの約5,000名を対象に質問紙調査を行った。性別違和感と抑うつ・攻撃性といったメンタルヘルスの関連は本研究課題や他の先行研究でも示されているものの、それを媒介する変数とその要素は明らかになっていない。性別違和感は、違和感そのものがメンタルヘルスに関連する可能性と、性別違和感によって対人関係の困難を感じやすくなり、日々の対人関係の困難によってメンタルヘルスが悪化しやすくなる可能性の両方が想定される。そこで、友人ストレス・家族ストレス・教師ストレス・学業ストレスを媒介変数として想定して測定した。分析を行ったところ、抑うつ・攻撃性ともに媒介変数の効果が認められた。性別違和感から友人ストレス・教師ストレス・家族ストレスには、性差(身体的特徴による)が認められ、いずれも男子が高い傾向にあった。学業ストレスには性差が見られなかったことから、対人ストレス特有のものであることが考えられる。また、抑うつ・攻撃性ともに直接効果も見られた。以上を海外雑誌に投稿すべく準備中である。 研究期間全体を通して、本研究は小中学生の性別違和感について継続的に調査を行い、(1) 子ども用に開発されていた性別違和感尺度のカットオフ値を設定し臨床的有用性の高い尺度にした、(2) 性別違和感と心理社会的不適応の関連を示した、(3) 性別違和感の時間的安定性について明らかにした、(4) 尺度の範囲を広げ大学生における性別違和感の程度についても知見を得た、という4点が成果である。
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