研究課題/領域番号 |
18K13336
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
岡本 悠 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 心理療法士 (70800605)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 高照度光療法 / 認知症 / 認知症ケアチーム |
研究実績の概要 |
本研究は、「認知症ケアチーム」(以下、チーム)の活動の一環として、総合病院に入院している認知症患者を対象に、認知症に伴うせん妄や行動・心理症状の改善のための介入法の1つである「高照度光療法」を行い、その効果を明らかにしようとするものである。 「高照度光療法」に使用する器材は、照度や照射距離の安定性に優れた(株)電信社製の器具「ルーチェグラス」、(株)すこやかメディカル社製の高照度LED照明器「バルケー2」を採用した。効果を明らかにするために、対象となる患者を、チームの標準的な対応に加え、「ルーチェグラス」による「高照度光療法」を行うグループ、チームの標準的な対応に加え、「バルケー2」による「高照度光療法」を行うグループ、チームの標準的な対応のみを行うグループの3グループにランダムに分け、グループ間の比較を行うこととした。 2018年度は、チームが対象としている患者の社会的背景や、入院中に生じた行動・心理症状や病棟からの依頼内容などの実態把握を目的とした研究を行った。その結果、大半のケースは、入院前から何らかの要介護認定を受けている一方で、一人暮らし等の理由により、入院前の生活の状況や病歴が必ずしも明らかでないケースが一定数存在していることが明らかとなった。また、夜間眠れず、日中うとうとしてしまうという生活リズムの問題や、治療の必要性が理解できず、混乱してしまったり、時としてその混乱から暴言・暴力に至ってしまったりするといった行動・心理上の問題が病棟内で頻出している現状が明らかとなった。以上の研究の成果は、2018年11月に開催された第31回総合病院精神医学会においてポスター発表の形式で公表し、現在は国内学術誌への投稿の準備を進めている段階である。 なお、上記の研究活動と並行して研究に必要な物品の確保を行い、「バルケー2」以外の必要物品の確保を完了した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初は、2018年度から「高照度光療法」を行う予定であったが、以下のような理由により、当初の予定よりも進捗が遅れている。 まず、2018年8月に、使用予定であった「バルケー2」が製造中止となっていたことが発覚し、研究計画の変更を余儀なくされた。やむを得ず変更した研究計画について、院内倫理委員会の審査を受けたところ、「ルーチェグラス」に関して、2018年4月1日に施行された臨床研究法上、未承認の医療機器に当たる可能性があるため厚生労働省の審査を受けるよう指摘を受けた。その指摘を受け、厚生労働省ならびに自治体の担当部署への審査を依頼し、10月に、同器材は未承認の医療機器であり、特定臨床研究に該当するとの判断を受けた。その後、特定臨床研究の所定の書式に従う形で研究計画書やその他必要書類の全面的な改定作業を行い、2019年2月に改めて院内倫理委員会に必要書類を提出した。現在は、院内倫理委員会の指摘を受け、研究デザインや、研究の安全性に関して再検討を行っている。 以上のような、必要物品の1つが予期せずして入手できなかったことにより、研究計画の変更に迫られたことに加え、特定臨床研究に該当するかどうかの審査を受ける必要があり、その間は計画を進めることが不可能であったことなどから、やむを得ず進捗が遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
【現在までの進捗状況】の項に記載した通り、現在は院内倫理委員会の指摘を受けて研究デザインや、研究の安全性に関する再検討を行っているが、必要な器材が入手できず、研究計画の変更を余儀なくされたことや、患者の心身の安全性を確保するのが極めて困難であることが予測される状況である。 加えて、本研究は、申請者が所属する「精神科」が主体となって行う研究であるが、2018年度末に、精神科責任者や「認知症ケアチーム」の構成員をはじめ、主要な研究協力者の予期せぬ異動が生じており、研究実施体制の維持も困難な状況となっている。 上記のような理由から、やむを得ず、研究事業の廃止を検討している
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次年度使用額が生じた理由 |
当該助成金が生じた状況としては、主に以下の2点が挙げられる。すなわち、1)使用予定であった高照度光療法器具である「バルケー2」が生産中止となったため、そのための予算を使用しなかった、2)研究使用のためにノートパソコンを購入する予定であったが、精神科備品のパソコンで代用可能であることが判明し、購入する必要がなくなった の2点である。 そうした状況から、上記金額を翌年度分として請求したが、【今後の研究の推進方策】の項に記載した通り、翌年度は研究事業の廃止を検討しているため、使用する予定はない。
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