研究実績の概要 |
本年度は我々が以前日本語版を開発した「IBSに対する内部感覚曝露を取り入れた認知行動療法(CBT- IE)」を集団で実施可能な形に修正したプログラム(集団版CBT-IE)のIBS(Irritable Bowel Syndrome、過敏性腸症候群)に対する有効性を検証したランダム化比較試験について二次解析を進めた。この試験では薬剤抵抗性のIBSに対して、集団版CBT-IEは通常治療よりも有意にIBS症状を改善するとともに、生活の質をも改善することが示された。本研究においては新型コロナウイルスCOVID19の流行による影響を大きく受けた。しかし感染予防策として対面を避けるため、一部の参加者に対してはオンライン会議システムを利用した形でプログラムを実施することを検討し、実行した。その結果、オンライン会議システム上での実施であっても、対面での実施と比較してほぼ遜色ない結果が期待できることが示唆されるという副次的な知見も得られた。本研究の主要な成果については論文化し、国際誌にてその有効性を報告した(Kikuchi S, Oe Y, et al., 2022)。また、本年度は京都大学医学部附属病院と共同で、CBT-IEを普及させるための方法を検討した。そのひとつとして、よりインターネットを活用した形でCBT-IEを実施するための資材や実施方法を準備し、臨床実践の中で試行した。これにあたっては、これまで検討を進めてきたIBSに対する低頻度の簡易型認知行動療法における手厚い患者向けの補助資材の作り込みも参考にした。
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