研究課題/領域番号 |
18K13340
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
千島 雄太 京都大学, こころの未来研究センター, 特別研究員(PD) (30779608)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 時間認知 / 文化比較 / 感情 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,出来事の想起と感情状態が時間認知に及ぼす影響について,文化比較の観点から明らかにすることである。特に,初めのステップとして,先行研究で時間認知の測定に使用されてきた測度が日本において適用可能かどうかを検証する必要があった。そこで,1年目は,「研究1:時間認知を測定する課題の開発」を実施した。 研究1-1では,既存の課題(水曜日課題,パズル課題など)を日本語に翻訳し,日本人を対象に調査を行ったところ,既存の課題は言語の影響が強く,時間認知の個人差を測定することが不可能であることが示された。そこで,研究1-2では,言語に影響されないアニメーション課題を開発した。日本人とアメリカ人を対象に調査を行い,アニメーション課題の妥当性を示した。また,どちらの国においてもego-movingのアニメーションを選択するほど幸福感が高く,抑うつの程度が低いことが示された。コントロールの感覚については交互作用が示され,アメリカ人でego-movingを選択する人ほど,人生をコントロールできるという感覚が強いことが示された。 研究1でアニメーション課題を作成した後,それを用いて「研究2:出来事の想起が時間認知に及ぼす影響」の一部を実施した。その結果,未来についてはポジティブな未来を想像するほどego-movingの選択率が高くなり,過去についてはネガティブな過去を思い出すほどその選択率は高まった。そして,この傾向は日本人よりもアメリカ人で顕著であった。これらの結果は,アメリカ人では時間の流れと自己の動きを一体のものとして認識しやすいことを示唆しており,この点について引き続き詳細の検討を行う必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通りに研究を進めた上で,当初2年目に行う予定であった「出来事の想起が時間認知に及ぼす影響」についても,その一部を1年目に実施したためである。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は,引き続き「研究2:出来事の想起が時間認知に及ぼす影響」を実施する。過去・未来の出来事の想起内容によって時間認知が影響されるかを,1年目とは異なるアプローチで検証する。実験参加者は日本人成人とアメリカ人成人200名ずつである。研究1において示された,日本人よりもアメリカ人のほうが,時間認知に関する課題の選択が,出来事のポジティブさに影響を受けるという結果の再現を試みる。 さらに,「研究3:感情状態が時間認知に及ぼす影響」の一部を実施する。Richmond et al. (2012)などを参考に,感情状態を操作することで,時間認知が変わるかを検討する。研究3-1で幸福感,研究3-2で孤独感に焦点を当てる。幸福感の検討では,活性的幸福感(喜びなど)を喚起する条件と,非活性的幸福感(やすらぎなど)を喚起する条件に分ける。孤独感の検討では,寂しさを喚起する条件と,独自性を強調する条件に分ける。実験参加者等は,研究2と同様である。日本人においても,幸福感が喚起されるほどego-movingが高まるが,アメリカ人と比べるとその傾向が弱いと予測される。一方で,日本人の方が,孤独感が喚起されるほどtime-movingが高まると予測される。
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