研究実績の概要 |
3年目は、2年目に引き続き「研究2:出来事の想起が時間認知に及ぼす影響」を実施するとともに、「研究3:感情状態が時間認知に及ぼす影響」を行った。 研究2-4では、それまでのアニメーションとは異なり、感情価(ポジティブ/ネガティブ)・出来事の時間(未来/過去)・動き(ego/time moving)の三つの要素を一度に尋ねることができるものを作成した。出来事については指定せずに、一般的なライフイベントを思い浮かべる形式とした。実験参加者は、日本人成人とアメリカ人成人約220名ずつであった。分析の結果、どちらの国においても、未来のポジティブな出来事についてego-movingのアニメーションを選ぶ方が、time-movingを選ぶよりも、コントロール感、人生満足感が高く、抑うつが低かった。また、過去のポジティブな出来事についても同様の傾向があったものの、アメリカ人ではその傾向が弱かった。先行研究(Richmond et al., 2012)で指摘されているように、アメリカ人にとっては、このアニメーションがポジティブな過去から自ら遠ざかってしまうように感じる可能性も考えられる。 研究3では、元々幸福感と孤独感を操作する計画であったが、それまでの研究からコントロール感が大きな要因となっていることが示されたため、コントロール感を操作することとした。参加者は、日本人成人とアメリカ人成人約200名ずつであった。先行研究に従って、参加者はランダムに高コントロール条件と低コントロール条件に分けられた。実験操作後に、アニメーションの選択を求めた。分析の結果、どちらの国においてもコントロール感の操作は、アニメーションの選択に影響しなかった。ただし、コントロール操作がうまくいっていない問題が生じており、これについては今後の課題となった。
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