研究課題/領域番号 |
18K13341
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
西中 宏吏 千葉大学, 社会精神保健教育研究センター, 特任研究員 (30568788)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | リスクマネジメント / リスクアセスメント / リスク要因 / 保護要因 |
研究実績の概要 |
我が国の暴力事犯者の刑事施設再入率は低いとはいえない。刑事施設では再犯防止を目的にプログラム等介入がなされる。国外では、介入が有効に機能するためには暴力のリスクマネジメントが必要であると広く考えられている。 平成30年度は、暴力事犯者に特徴的なリスク要因を明らかにするため、刑事施設入所者819名にThe Japanese Criminal Thinking Inventory(JCTI)を含む質問紙調査を実施した(そのうち有効回答が得られた585名が分析対象となった)。そして、暴力事犯者とそれ以外の犯罪を行った者(財産犯、薬物事犯、性犯罪)との比較を行った。 暴力事犯者では、他の犯罪者に比べ、受刑する原因となった罪種の数が多いこと、虐待など養育上の問題がある家庭で育った者が多いこと、反社会的組織への加入経験のある者が多いことが示された。一方、刑務所への入所回数は他の罪種に比べ、暴力事犯者が少ないことが示された。 向犯罪的思考については、短絡思考(じっくりと取り組み続けることを避ける傾向)、切り捨て思考(嫌なことがあると統制を失い、無責任な行動をとる傾向)、自己欺瞞思考(都合のいいことを自分に言い聞かせる傾向)では、暴力事犯者とその他の犯罪者とでは統計的な有意差は認められなかった。また暴力事犯者では財産犯に比べて怠惰思考(やるべきことを後回しにしたり、問題に向き合うことを避ける傾向)をもっていないことが示されている。 本研究により示された暴力事犯者のリスク要因の特徴は、暴力事犯者に対するリスクマネジメントや介入プログラム等に示唆を与えるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題では刑事施設入所者に対しインタビューを行う必要があったが、協力施設での職員の異動や業務上の負担の増加、調査にかかる時間の捻出などの問題が重なり、受刑者の協力者を得ることが困難な状況にあった。
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今後の研究の推進方策 |
刑事施設のみでの調査は困難が生じたため、更生保護施設への調査協力を依頼し、了承が得た。今後は刑事施設出所者も本研究の対象とし、刑事施設出所者で更生保護施設を利用している者に、インタビューを行い、リスクアセスメント・ツールを用いてリスク要因および保護要因を評価し、再犯および問題行動の予測妥当性と評価者間信頼性を求める。また更生保護施設利用中にリスク要因および保護要因がどの程度変化するのかを確認する。
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