研究課題
本研究は、抑うつの効果的かつ効率的な治療を目指し、自伝的記憶の概括化(overgeneral memory: OGM)をターゲットとした介入手法を洗練することを目的としていた。そのために、(a)自伝的記憶の概括化に対する介入である記憶の具体性トレーニング(Memory specificity training: Mest; Raes et al., 2009)を日本人を対象に適用し、(b)既存のMeSTを発展させるべく、エピソード的未来思考のトレーニングを追加したメンタルタイムトラベルトレーニング(Mental time travel training: MTTT)を開発した。さらに、これらのトレーニングの裏付けとなる実証的なデータを提供すべく、大学生や社会人、大うつ病患者を対象とした実験的研究を実施した。OGMのメカニズムに関する実験的研究から、抑うつ者はポジティブな記憶に対するアクセシビリティが低下しており、それは生成検索によっても補えないこと、ネガティブで概括的な記憶に対するアクセシビリティが高まっていることが明らかとなった(e.g., Matsumoto et al., 2020)。MTTTでは、これらのメカニズムに特化したプログラムを構成した。多層ベースラインデザインによるプログラムの効果検証の結果、MeSTの抑うつに対する、MTTTの抑うつと不安に対する低減効果がそれぞれ認められた。特に、MTTTでは抑うつと不安に対する高い効果量が認められたことから、このプログラムは従来の記憶介入法の改良版と捉えることができる。今後の課題はこれらのプログラムを患者群に実施していくことである。
すべて 2021 2020 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Journal of Experimental Psychology: General
巻: in press ページ: 1-12
10.1037/xge0001028
Psychoneuroendocrinology
巻: 127 ページ: 105172~105172
10.1016/j.psyneuen.2021.105172
Cognitive Therapy and Research
巻: 44 ページ: 483~498
10.1007/s10608-020-10079-3
精神医学
巻: 62 ページ: 1651-1661
http://nobisphere.main.jp/