研究課題/領域番号 |
18K13345
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大塚 貞男 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (00816986)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 社会認知 / 社会適応 / 視聴覚統合 / 自閉スペクトラム症 / 統合失調症 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、統合失調症(SCZ)患者および自閉スペクトラム症(ASD)成人の社会認知機能障害を標的とする心理社会的介入プログラムを開発し、その適用と効果の範囲を明らかにすることである。海外でSCZ患者への有効性が確認されている社会認知スキルトレーニングを邦訳し、さらに、独自のトレーニング課題を追加して日本版プログラムを作成する。SCZ患者およびASD成人を対象としたランダム化比較試験を実施し、日本版プログラムを用いた集団療法介入が認知機能および心理・社会適応に及ぼす効果を検証する。 2020年度は、京都大学医学部附属病院を含む3つの医療機関における多施設ランダム化比較試験の研究実施計画について各機関の倫理委員会の承認を受け、ランダム化比較試験を開始した。この成果については、2021年度中に報告する予定である。また、本試験における効果判定尺度の1つとして、動画を用いた社会認知検査(Reading the Mind in Films Test:RMF)の日本語版を作成し、2019年度に取得した一般大学生31名のデータを解析し、日本発達心理学会第32回大会で報告した。解析の結果、自閉症スペクトラム指数が高く、特に社会的コミュニケーションに困難を感じやすい人は、RMFにおいて視覚情報と聴覚情報を統合して他者の感情や意図を読み取ることが苦手であることが示された。この結果は、RMF日本語版の社会認知機能評価尺度としての妥当性を支持するものである。 さらに、2020年度は、ASD成人の認知機能と心理・社会適応との関係性に関する縦断研究についても、継続的にフォローアップ調査を実施した。2~6年前に認知機能測定を実施したASD成人の内、再び協力が得られた25名を対象に心理・社会適応に関するデータを取得した。この結果を解析し、社会認知トレーニングの課題の選定や修正に役立てていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ランダム化比較試験の開始は当初の予定より遅れたが、単施設の計画から複数の協力医療機関を含めた多施設ランダム化比較試験に拡張することができた。新型コロナウイルス感染症流行の影響を受け、研究活動の制限や、研究のフィールドである精神科デイケアにおける様々な制限がおこなわれている中であるが、参加者の組み入れは概ね順調に進んでいる。効果判定尺度の開発とその妥当性の検証や、ASD成人を対象とした調査研究も並行して進んでおり、研究プロジェクト全体として着実に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
実施中のランダム化比較試験について、研究参加者の組み入れ、介入および効果判定評価を進めていく。新型コロナウイルス感染症の流行により様々な制限がおこなわれる中で、感染拡大防止について十分に対策をおこない、慎重かつ着実に研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ランダム化比較試験の開始が当初の予定より遅れたため、予定していた出費の一部が次年度にずれ込んでいる。計画していた研究の遂行に伴い、必要な物品の購入、研究参加者謝金、人件費、旅費、英文校正費などに使用する。
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